チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年6月24日
ラサの若者の携帯を公安がチェック/法王長野レポート
追記:24日、カルマ・サンドゥップ氏に判決が言い渡された。
15年の懲役刑+5年の政治的権利剥奪+1万元の罰金。
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昨日、今日のRFAからまだ活字になっていない、幾つかのニュースを短く紹介する。
昨日:
*シガツェ地方の鉱山で鉱山開発に反対する地元のチベット人と武装警官隊が衝突し、30~50人が逮捕される。
*ラサで若者が公安職員に殴り殺された。政治的抗議の結果かどうかは不明。
今日:
*ラサの町では公安が、最近、盛んにチベット人の若者たちの携帯をチェックしている。
携帯の中に法王等の写真や政治的チベットソングが入っていないかどうかをチェックするためと言う。
携帯の中に法王の写真が入っていたとして、一人の若いチベット人女性が逮捕され、現在ウディドゥ拘置所に拘留中。
*サキャ派のトップ、サキャ・ゴンマ・リンポチェの二人の息子がチベットを訪問するために中国に入った。
二人がカムのミニャやデルゲを訪問するという計画を知り、周辺のカンゼ、タウなどのチベット人が大勢、二人に会うためにミニャやデルゲに向かった。
その数、数千人という。
しかし、5,6日現地で二人の到着を待つも、リンポチェの息子は現れず、みんな「中国が許可しなかったのだろう」と言いつつ、帰途に着いたという。
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以下、長野での法王のメディアへの発言など、比較的詳しく紹介してくれてる藤倉善朗氏の記事を紹介する。
写真は前回も含めいつもの野田雅也氏。
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<ダライ・ラマ法王が長野・善光寺を初訪問>
http://www.pjnews.net/news/533/20100623_3
【PJニュース 2010年6月24日】
6月19日、来日中のチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ法王14世が長野県長野市内の善光寺で法要を行った。善光寺は2008年4月に長野市内で行われた北京オリンピック聖火リレーの際、スタート地点となることを辞退。ダライ・ラマ法王は感謝の意を表して釈迦像を同寺に贈っていたが、長野県を訪問するのは初めて。
今回の訪問は、善光寺のダライ・ラマ法王14世招聘実行委員会の招きによるもの。2008年4月に、北京オリンピックの聖火リレーが長野市内で行われた際、善光寺は「一般参拝者への影響が懸念される」ことを理由として、聖火リレーの出発地点となることを辞退した。さらに聖火リレー当日の早朝に善光寺内では、一連のチベット騒乱での死者を追悼する法要を開催。昨年の4月にも同様に法要を行っている。
19日午後2時過ぎ、ダライ・ラマ法王は善光寺参道で参拝客らに歓迎されながら本堂に到着した。参道にはチベット人やそのほかの外国人、チベット支援者と思われる人々の姿もあったが、地元の一般参拝者らしき人々も多かった。いわゆる「フリーチベット」イベントというよりも、寺院での宗教イベントらしい盛り上がりといった印象だ。
善光寺の僧侶らとともに本尊前で参拝したダライ・ラマ法王は、同寺への来訪記念で製作された本堂内の砂曼荼羅を前に、チベット僧侶らと開眼法要を行った。砂曼荼羅は、チベット四大僧院のひとつであるタシルンポ僧院の僧侶ら計10名が15日間かけて製作したもので、善光寺の本尊にちなんで阿弥陀如来が描かれている。法要後、善光寺寺務総長・和田正隆氏と共同記者会見を行ったダライ・ラマ法王は、こう語った。
「今日、この善光寺という聖地を巡礼させていただきました。初めての訪問となりますが、このような素晴らしい機会を得たことをありがたく恵まれたことだと考えております。先ほど、一緒に世界平和祈願の法要を営むことができ、恵まれた機会と感謝しております。唯一いただけないのは、とても暑いということと、湿気がとても高いということです(笑)」(ダライ・ラマ法王)
「日本の仏教、そしてチベット、韓国、中国、ベトナムにおける仏教は、釈尊の同じ教えを引き継いでいる国々で、同じサンスクリット語の伝統に基づく教えを維持しているという意味で同じ立場にあります。私たちはたったいま御本堂におきまして世界平和祈願の法要を終えたばかりですが、釈尊の教えに基づいて私たちが真摯な態度で心からその修行を行っていけば、私たち自身の心の中に平和が芽生えていきます。ひとりひとりの心の内なる平和をはぐくんでいくなら、個人が属している家庭もますます平和になります。ひとつの家庭をより慈悲深いものとして、一の家庭、十の家庭と広げていけば、平和的な社会を構築していくことができるのではないかと思います」(ダライ・ラマ法王)
報道陣から、「善光寺訪問の理由として、2年前の聖火リレー辞退の件があると思うのですが、その点をどのようにお考えですか?」と尋ねられたダライ・ラマ法王は、「私の日本訪問を政治的なものにしないで下さい」とした上で、こう答えた。
「中国政府は聖火リレーの時点で、私たちチベット政権が彼らを邪魔していると批判していました。そのときすぐに、私は北京オリンピックを邪魔すべきではないと表明しました。中国の方々は非常に素晴らしい方々です。問題はどこにあるかというと、中国政府がとっている全体主義的なシステムです。私たちは反中国ではなく、システムに問題があると言っているのです。胡錦濤国家主席は中国において『調和のとれた社会が必要だ』と何度も強調しておっしゃっています。それは本当に必要とされているものですが、銃を突きつけて脅して作り上げるものではありません。オリンピックの聖火リレーでは、個人の方々がチベット問題の解決に向けて様々な支援をしてくださいましたが、その方々を私は『チベットの友人』とは考えていません。『正義を応援してくれている人々』だと考えています。ですから善光寺の方々が聖火リレーの出発地点を辞退したという行為は、全世界に対して、(中国政府によるチベットでの)不正義がいまも存在していることをアピールする大変素晴らしい行いだったと私は認識しています」(ダライ・ラマ法王)
日本で活動する漢民族のジャーナリストからは、「中国の若者にメッセージを」との要望。
「中国の方々は実践的な面では勤勉で働き者だと思っています。ビジネスも上手で、非常に裕福になられているという一面もあります。加えて、自分自身の中国人としての文化を維持していくという強い精神を感じることができます。1950〜70年代とは違い、現実的なことを知るチャンスが増えていると思います。若い中国人には、両方の眼をしっかり開けて、両方の耳でしっかり聞いて、現実には一体何が起こっているのかということをしっかり見て聞いていただきたい。さらに自分自身で状況を調べる、分析するということをぜひしていただきたいと思います」(ダライ・ラマ法王)
地元メディアから長野県民へのメッセージを求められると、「長野にお住まいの方も、ひとりの人間であるという点で私と全く同じ。私はどこに行っても、私たち人間に基本的に備わっている価値についてお話しさせていただいています」(ダライ・ラマ法王)と答えた。その上で、「聖火リレーの出発地点を辞退するということで、私たちが抱えているチベット問題に心から同感してくださったことに対して、心からの感謝を述べさせていただきたいと思います」(同)と語った。
翌20日、長野市内のホール「ビッグ・ハット」で行われた講演には、約6500人が来場した。21日にダライ・ラマ法王は善光寺裏手の「西蔵宝篋印塔」と善光寺近くの西方寺を訪問。「西蔵宝篋印塔」は、亡命チベット人を日本に招いた多田等観師にちなみ、日本とチベットの友好を願って1964年に建立されたもの。一方の西方寺は、チベット仏画師が製作した立体マンダラ堂が完成したばかり。ダライ・ラマ法王はここで開眼法要と法話を行った。
22日に金沢市内で講演したダライ・ラマ法王は、26日に横浜市内で法話と講演を行う。【了】
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)