チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2010年4月23日
被災地で、チベット独立を叫ぶ者に対しては、発砲してもよろしい
現地には一昨日から雪が降り始め、今日は積雪3cm。
まだ、数日この悪天候は続くとの予報。
寒い日が続く。
RFAチベット語版、4月22日:
http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/tibet-independence-activists-could-be-shot-in-earthquake-zone-04222010222934.html
<チベット独立の声に発砲許可>
被災地のジェクンドでは、兵士は、チベット独立を叫ぶチベット人と衝突した場合、上官の許可なしに発砲してもよい、と言い渡された。
14日に起こった大地震によりジェクンドとその周辺で数千人の人が亡くなり、一万人以上が負傷し、今も数百人が行方不明のままだ。
そんな中、20日にはチベットの各地から集まった僧侶数千人による、初七日の法要が行なわれた。
Epoch Times(大紀元)の記者に現地の兵士が話したところによれば、「もしも兵士が、チベットの独立を叫ぶ者達に突然鉢合せたり、彼らと衝突した時には、直属上官の許可を得ずに、即発砲し、銃殺してもよい」と言い渡されたそうだ。
さらに同紙によれば、現地のチベット人たちの間には、ダライ・ラマ法王が本当に現地に来るという噂が広がるにつれ、法王に会うことができるという期待が膨らんでいる、ということに対し、共産党の幹部たちは警戒心を高めているという。
このような状況の中で、今まで救援活動の中心的役割を担っていた僧侶たちに対し、当局は被災地から出て行くようにと命令を出した。
ロサンと呼ばれるジェクンド出身の僧侶によれば、「地震の後、周辺の僧院から総勢4万人の僧侶が救援のため駆け付けた。20日に当局の役人が2日以内にそれぞれの僧院に帰るようにと命令してきた。その日の午後4時前に出ていけと言われた僧侶もたくさんいる」という。
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この僧侶たちを追い出す、という当局の決定に対し、現地のチベット人たちの間に怒りの声が上がっている。
ある現地の人は電話で「これは、自分たちに自由がないという象徴だ!悲しいことだ!中国こそ出て行ってくれ」と涙ながらに
訴えた。
ウーセルさんも「今まだ、ガレキの中に遺体は残っている。これからも葬儀を行なったり、人々を癒すために僧侶たちは被災地のみんなに必要とされている。今、僧侶たちを追い出すというのは間違った決定だ」とコメントしている。
このような状態では、中国が救援物資によりチベット人にありがたがられようとしても、期待通りにはいかないであろう。
チベット人がここで不満の声を上げれば、中国人は「この恩知らずめが」とののしり、最悪銃殺してもいいと言ってるのだから。
チベットのデモ隊に向かって発砲してもいいという命令は、今までの慣例通りであり、驚くにあたらないが、この悲劇の最中にあるチベット人に対してもこれを適用するというところが、恐ろしい。
これが、カンゼなら今頃大暴動が起こっていてもおかしくない。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)