チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年4月2日
子供たちの絵が語る真実
送った1枚は前のと同じく、今日ネルレンカンで撮ったもの。写ってる彼は、去年最初にヒマラヤ越えを目指して失敗し、シガツェの刑務所に半月いた子です。
彼が今日描いた絵です。描くのを見てて、出来上がったと同時に撮ったもの。
絵をよく見ると、監獄で僧侶が拷問を受けてる様子を描いています。
「本当にこんなのを見たことがあるの?」と聞くと、「お坊さんが磔になってるとこは、トラックのうしろに磔になって連れて行かれたのを見たことがあるよ」とのこと。尋問(拷問)部屋のようなその部屋の壁に、いろんな棒のようなものを描いてるので、「これは何なの?」と聞くと「これはいろんな殴る道具だよ」。
「へーこんなとこ見たことあるの?」
「中で殴られたりしてるとこは見たことないけど、部屋は見たことあるよ」
「この中国人の手に持ってるもの何なの?」
「これは電気棒だよ!」
部屋の外、右側にくっつくようにして人が跪いてるとこが描かれてるので「この人、何してるの?」と聞くと、「この人は中の人を助けてくれって頼んでるんだよ。前にあるのはギャワリンポチェの写真だよ」と答えました。
この子のちょうど後ろに写ってる地図のような絵は、例の、去年ナンパラを越えようとしたチベット人難民に中国軍が発砲して数人が死んだという事件の絵なのです。外国登山隊が撮影したビデオが公開されたやつです。その、まさに一行に加わってた子供が、ここにきて描いた絵だそうです。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)