チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年10月31日
ドゥンドゥップ・ワンチェン氏の獄中からの手紙
10月30日のニューヨーク・タイムズ紙は「恐怖を乗り越えて」の製作者ドゥンドゥップ・ワンチェン氏の手紙を入手し発表した。
http://www.nytimes.com/2009/10/31/world/asia/31tibet.html?_r=2
この手紙は一カ月前に書かれたもので、獄中から極秘に外に持ち出され、スイスにいる従兄経由で発表されたものだ。
ニューヨーク・タイムズには全文発表されていないがITSNのAlison Reynolds氏より全文と思われるものが送られてきたので以下、その手紙を訳す。
「数日前、私は悪夢を見た。
<何か大変なことが家族に起こったのではないだろうか?>
という思いと戦わねばならなかった。
私は年老いた両親のことを心配した。
本気に心配した。
二人の近況を知らせてほしい。
どうか隠し事はしないでほしい。
私の状況についていえば、何も心配する必要はない。
私は自分の運命に向き合う用意ができている。
解放される望みは薄く、今後長期間に渡り獄に留まるであろうと思うとき、
両親に対し、面倒をよく見る、良き息子であることができなかったなあと感じる。
私の裁判はすでに始まっている。
知らせたい良いニュースは何もない。
刑期が何年になるかまだ判らない。
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アメリカを中心にオバマ大統領の中国行きを前に、特にドゥンドゥップ・ワンチェン氏の解放をオバマ氏に直接訴える運動が熱を持って来ました。
ルンタもSFT・Japanさんに手伝ってもらい、ドゥンドゥップ氏の妻ラモ・ツォさんを中心にした残された家族の物語「ラモ・ツォ 悲しみの湖をこえて(原題Behind the Sea)」の日本語版を完成しました。
さっきそれをYoutubeにアップしようとトライしたのですが、分割できず、まだできてません。
11月7日、東京でSFTさんが上映会を開かれるはずです。
獄中で悪夢を見、両親に何かあったのか?死んでしまったのかもしれない?と思う優しい息子。
理不尽な運命の判決を待ちながらも、自分のことより周りの人のことを常に心配してる人なのでしょう。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)