チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2009年10月28日
TCVダラムサラに4人のノーベル平和賞受賞者が集まる
今日はこんな世界の果ての難民学校TCV(チベット子供村)にノーベル平和賞受賞者が法王を含め4人も集結したという記念すべき日でした。
こんな良き日に私の設計した(<-ーまた不要な宣伝)ホールにこんな偉い人たちが集まり、平和についてのお話をされるのを見て、私は昨日と同じように大きな地震が来ないことを祈りました。
今日も写真沢山です。
まずは、朝9時過ぎ法王がTCVのグランドに到着される。
赤い傘の下に法王。
計算どうりすぐそばを通過される。
挨拶はいつものようにファインダーの中だけで。
この「PeaceJam」という教育プログラムのようなものは、15年前にアメリカのコロラドで法王のイニシアティブのもとにはじめられたとのこと。
コロラドにアメリカで記録となる6人のノーベル平和賞受賞者を集めて会議を開いたこともあるそうです。
このTCVではこれが4回目です。
法王以外の三人は何れも女性、アメリカからJody Williams女史,北アイルランドからMairead Corrigan Maguire女史,イランよりShirin Ebadi女史です。
手前にJody Williams女史、次がMairead Corrigan Maguire女史、法王の向こうにShirin Ebadi女史。
後ろには亡命政府の高官が勢ぞろい。
ほんま、贅沢な学校です。
初めに全員で<ツェメーユンテン・真理の祈り>が合唱された。
今日はTCVの子供たちの大きな声がホールに響き渡りました。
法王は終始手を合せ祈られていました。
最初に平和に対するアドレスをされたのは、Jody Williams女史。
1950年アメリカのベルモント出身。
彼女は1997年、地雷禁止キャンペーンのリーダーとしての仕事が認められノーベル平和賞を受賞した。詳しくは以下へ、
http://en.wikipedia.org/wiki/Jody_Williams
「法王は慈悲の意味を教え、人間性の大事さを世界に知らせる。様々なレベルで暴力が蔓延する今の世界にチベット人、その文化、仏教が生き残り貢献し続けることは非常に大事だ」と言われ、
「次に法王にお会いでするのはチベットの中にしたい」との最後の言葉で大きな拍手を取っていました。
(とても簡単ですみません。詳しく話の内容を知りたい方はTCVにご連絡ください)
次はMairead Corrigan Maguire女史。
http://en.wikipedia.org/wiki/Mairead_Corrigan
彼女は1944年北アイルランドのベルファースト生まれ。
1976年北アイルランド紛争を平和的に解決することに貢献したとしてノーベル平和賞を受賞した。その時彼女は32歳、現在まで記録となる最年少受賞者でもある。
彼女は最初どうしても法王の説かれる慈悲の心になじめなかったという。
それが、今では法王の慈悲の教えを中心に行動している自分を発見する、と話し始められ、「慈悲とは行動だと知った。法王の言われるように人を助けることを決して諦めず、常に前進することだ、、、
オバマ大統領今回法王に会わなかったが、これは経済のために人権を軽視している印だ。我々には好戦的で物質的発展ばかりを言うリーダーは必要ない。人権を優先し、慈悲と寛容の心を説くリーダーがほしいのだ。法王こそ理想のリーダーだ」
とおっしゃいました。
次にイランのShirin Ebadi女史。
1947年イランのハムダン生まれ。弁護士。
http://en.wikipedia.org/wiki/Shirin_Ebadi
2003年、イランにおいて特に難民、子供、女性の人権を守り、民主主義推進に貢献したことが認められ、イスラム社会で初めての女性ノーベル平和賞受賞者となった。
彼女は通訳を介して話された。
さすがに厳しい政治環境の中で(平和的に)闘いながら過ごしてこられた人のようで、話しかたが3人の中で一番厳しかった。
同じくオバマ氏のことを「法王に会わないとは、人権に関心が薄い証拠だ。
核軍縮のことしか考えていないみたいだ」とやり、
「法王は慈悲は敵に服従しないことだと教えてくれた。慈悲は正義を求めるものだ」
と厳しい顔。
「しかし、黒人の大統領がアメリカに誕生するとだれが100年前に予想できたであろう。ベルリンの壁も崩壊し、ソ連も消えた。真理が勝利した証しだ。世界は変化している。チベット人が真理の戦いを続ける限り、きっとチベットに自由が来る日がやってくると信じる」
最後に同じく「法王は今の世界が求める理想的リーダーだ」と締められた。
最後はもちろんダライ・ラマ法王。
最初に「お忙しいのに、こんな田舎までわざわざお越しいただき皆様には本当に感謝する」とお礼の挨拶。
「私など20cの人間はもうグッドバイだ。21cはここにいる若者たちが作る世紀だ」と始められ、「すべての世界の問題は極端な利己心からくる。<I,mine>だ。
世界を自分の一部と感じないといけない「We」だ。
と話されているとところの写真です。
詳しくはまた。
現在の亡命チベット人社会の中心的リーダーたち。
左からTCVのジェツン・ペマ女史、議会副議長のドルマ・ギャリ女史、議会議長のペンパ・ツェリン氏、そして首相のサンドゥン・リンポチェ。
会が開けてのこと。ホールの外に出て車に乗ろうとする3人の受賞者たちを囲って生徒たちのサイン会や写真会があちこちで始まりました。
その様子を写真に撮っていたカメラマンたちの中で隣にいた例のロプサン・ワンギェルが急に自分のカメラを私に渡して目の前にいたJody Williams女史と女の子が写真に写っているところに入りこみ自分と彼女の写真を撮れという。
「はあ、、、何でカメラマンのお前が入るの?」と思ったが、さすがロプサン、普通は思いつかないことをすぐに実行に移す(ミス・チベットとか、チベッタンオリンピックとか)ということです。
これを見た他のチベット人カメラマンも次々にカメラをまわし合いながら己とのツーショットに走り始めた。
というわけで、これはロプサンが撮ってくれたノーベル平和賞受賞者とのスリーショットです。
普通はそんな時間があるならインタビューでも取れよというところです。
ロプサンは私と会うと挨拶代りに日本語で「ばかじゃん、だめだめ、、だいじょうぶだいじょうぶ、わたしこわくない、、、」と新宿で覚えた日本語を披露します。
このツーショットを私に頼んだのは息子の悪友で、この前確か9月12日のNHKにてTCVの若き先生として紹介されたツェリン・ノルブです。
今日は学校やめてルンタのカメラマンになるとかいってました。
「そうか、で今幾ら貰ってるの?」と聞くと「5000ルピーだ」という。
「そう、いいじゃん。うちじゃそんなに出せないな、、、」と私。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)