チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年12月3日
国際チベット支援団体(TSG)特別会議コミュニケ
コミュニケ草案が発表された後、その内容をめぐって「あまりにソフトな外交用語が多すぎる。もっと直接的な強い言葉を使うべきだ」との意見が多く出され、修正されたものが以下の「コミュニケ」です。
もっとも以下の稚拙訳は私の試訳であり、言葉を補った部分もあり、正式なものでは決してありません。
参考までに掲載するものです。
原文は:
http://www.tibet.net/en/index.php?id=559&articletype=flash&rmenuid=morenews
に掲載されています。
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<国際チベット支援団体(TSG)特別会議コミュニケ>
チベット人の第二の故郷、インドで行われた国際チベット支援団体(TSG)特別会議は、支援者全員に更なる行動を強く呼びかけると共に、中華人民共和国のチベットに対する非妥協的アプローチを非難し、危機的状況にあるチベット人に対する連帯を表明し、本日閉会した。
ダライ・ラマ法王は「選挙によって選ばれた我々の政治的リーダー達に、チベットの人々の切なる基本的な願いを叶えるための、可能で最良の道に関する提案を示して頂くために」インド・主要チベット支援団体の主催によるこの国際会議に、支援者
たちが結集することを要請された。会議は、これに先立ちダラムサラで11月17日~22日に行われた、『特別チベット全体会議』を受け開催された。
開会にあたり、最初に一分間の黙祷が、チベットで亡くなった人々のため、特に2008年3月以降の蜂起による犠牲者及び、今回ムンバイでテロリストの犠牲となった者たちのために捧げられた。
最近のチベットでの残忍な弾圧、及びダライ・ラマ特使との先の会談後の中国政府の攻撃的プロパガンダに鑑み、世界30各国より集まった100人を超える参加者は行動への緊急性を認識すると同時に、非暴力的アプローチを引き続き誓い、チベットの人々の自決権を支持することで合意した。
中国政府のダライ・ラマ法王に対する硬直化した強硬政策を非難し、特に話し合いに進展が見られないことに苛立ちを示した。参加者たちは、チベット人の抵抗運動に対する新しい枠組みを探ることを支持すると約束した。ダラムサラで行われた11月の
『特別チベット全体会議』を前に、ダライ・ラマ特使たちにより「高度な自治のための覚書」が発表されたことを歓迎した。
真剣かつ熱烈な討論の間、多くの参加者から亡命政府に対し、近い将来チベット内部の状況に明らかな改善が見えず、中国側からの真摯な対応が示されない場合には、中道路線(中国の枠内で自治獲得を目指す)を必ず見直し、独立を目指すべきだとの意見が出された。
国際特別チベット支援団体会議の代表者たちは、「チベット内部にいるチベット人」の要望を第一とすることを再確認した。3月以降チベット高原全域で表れた、平和的レジスタンスの内に示されたチベットの人々の偉大な勇気に対し、心からの賞賛の意が表明された。この抗議はチベットの中国による支配を拒否したものであり、中国によるチベット侵略後ほぼ60年にわたる怒りの積み重ねを表し、それが爆発点に至ったものだ。異議を唱えることにより、チベット人たちは中国政府ではなく、ダライ・ラマ法王とチベット亡命政府が彼らの利害を代弁するものである、というメッセージを伝えているのだ。会議は、現在も事実上の戒厳令下状態にあるチベット人の、終わりなき苦悩に対する深い憂慮と、政治犯及び何百人にも及ぶ行方不明者の家族に対する連帯を表明した。
会議は、先に行われた『チベット特別全体会議』を、チベット・コミュニティーから様々な意見が自由に発言され、討論される場が与えられたとして歓迎し、これは亡命チベット社会の各組織と市民社会全体を強化するために継続すべき重要な民主フォーラムであると評価した。そして、中国の監視下にあるにも関わらず、恐怖で極度に緊張した状態にあるチベット内部から、会議のために意見を集約することに努めたことも合わせて評価した。『チベット特別全体会議』では、三つの地域(ウ・ツァン、カム、アムド)にいるチベット人たちが、チベット人としての国家、文化、宗教的アイデンティティーのもとに強い統一感を示したのと同様の連帯を、チベット高原全域のチベット人に確認できた。
代表団は、この21世紀における、特に紛争解決のための第三の新しい道を示す点において、チベット仏教の精神的伝統と文化の重要性を強調した。
本会議は、ダライ・ラマ法王と亡命チベット政府をチベット人民の卓越した、正当な代表とすることを再確認した。各国が亡命政府を正式に承認するための働きかけを継続することを同意した。
代表団は、ダライ・ラマ制度の存続の重要性を認識した。ダライ・ラマ法王のリーダーシップは、世界中の数百万人の仏教徒、及びヒマラヤ地域の多くの国、モンゴルとその他の地域に及ぶことを認知する。
代表団は、チベットにおける不正義を終わらせるために、各自の努力をさらに強化することを約束し合った。関係国政府に対するチベット人擁護活動についても話し合われた。特にネパールについては、中国政府が地域への影響力を増しているため、弱い
立場にあるチベット人を擁護することが緊急の課題であるとされた。チベットは地政学的に非常に重要な地域である。世界の第三の極として、又アジアの主要な大河の源として、その影響は数億人に及ぶ重要な緊急問題であることを、特にアジア諸国を対
象に啓蒙すべきことを確認した。
中国政府の政治的キャンペーンが更なる不安定と緊張を助長していることを注解し、これにより、状況は2009年3月10日の蜂起50周年に向けてさらに悪化する危険性が指摘された。特に、中国政府のチベットの状況に対する歪められた情報の結果として沸き起こっている、反チベット人感情と民族主義的感情を鎮めるために、会議では中国人と接触するための新しい方策について考察、展開すべきことが約束された。
会議中に話し合われた、支援、監視、キャンペーン行動、中国人との交流及び対話プロセスに関する詳細な提案、勧告が、亡命政府に提出される予定である。
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以上
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)