チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2008年9月25日
ダライラマ法王の講義が始まった。
久し振りに公の場にお出になった法王でしたが、そのお顔色、立ち居振る舞い、お声からはまったくお元気そうに見受けられました。
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朝9時半より、ダラムサラのツクラカンにて法王のティーチングが始まった。
体調に鑑みてなのか?スケジュールはいつもよりのんびりムードで朝は11時半に終わった。午後も1時より2時半までだった。
いつもより午前午後一時間ずつ短縮されている。
今回の3日間の教えはシンガポールの人たちが施主だ。
華僑が中心だ。
数百人のシンガポール人が本堂の中を埋めていた。
今回はなぜか日本人席が初めて法王庁により前もって押さえられていた。
それも相当に良い席だった。
私なども久しぶりに法王のお顔をまじかに見ながら講義を聴くことができた。
もっとも、回りの日本人たちには(いつものことだけど)FMを通して聞けるはずのマリアの日本語通訳が、電波が弱くて聞けない人が多かったようだ。
法王はこの日の午前中は英語で講義された。
これは私の経験では初めてのことだった。ダラムサラで仏教の講義をされるときはチベット語と決まっていた。
英語で話されると、もとろんスピードは落ちるのでかえってこちらは解り易くもあった。
今回は本堂とそのまわりは、ほぼアジア人種で埋め尽くされていた。
シンガポール、台湾、マレーシア、韓国に日本人だ。
もちろん日本人グループはいつものように一番数が少なく30人程だった。
法王は「大乗仏教がチベットより早く中国に伝わっていたから、中国仏教徒には長兄としての尊敬心をもっている。しかし後から来たチベット人だが、弟子や弟のほうが知識の点では優っていることもよくあることだ、そのように仏教に関する知識においてはチベットが上かもしれない、イッヒッヒッヒッ」と最初にちょっとチベット仏教を自慢?されたりもした。
「あるアメリカの医者から<I,My,Me,Mineを連発する人ほど心臓病に罹る率が高い>という話を聞いた。仏教の無我を知れば寿命も延びるということだ。ハハハ」
とか、講義の間何度も笑わせてもらえた。
午後に入り、テキストに入るとさすがにチベット語にスイッチされた。
「仏教を説くにはチベット語が世界で一番すぐれている」とコメント。
テキストはジェ・ツォンカパの作である「ラムリン・ドゥドゥン=菩提道次第集義」。これはジェ・ツォンカパの主著「菩提道次第広論」の要約版。
今日のところは、はじめに釈迦無二仏陀の心の功徳について話され、そのまま、四諦、縁起と空について自在に解説された。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)