チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2016年5月7日
1ヶ月半後に明らかになった新たな焼身抗議 5児の母
RFAが5月6日までに現地からの情報を元に明らかにしたところによれば、約1ヶ月半前の3月23日、アムド、ンガバ(四川省アバ・チャン族自治州)、ゾルゲ県で5児の母が中国政府に抗議するため焼身・死亡していた。RFAは当局による情報統制と目撃者が少なかったことが、外地に情報が伝わるのを遅らせた原因ではないかとコメントしている。
現地時間の昼過ぎ頃、焼身したソナム・ツォ(བསོད་ནམས་འཚོ། 50)は夫と共にゾルゲ県アキ郷にあるセラ僧院(ཛོད་དགེ་རྫོང་ཨ་སྐྱིད་སེ་ར་དགོན་པ།)の周りをコルラ(右繞)していた。ツォは夫に「自分はちょっとお堂に寄って行くから、先に行っておいて下さい」と告げた。その数分後にツォは境内で焼身した。焼身を目撃した僧侶は「彼女は燃え上がりながら『チベットに自由を!』『ダライ・ラマ法王のご帰還を!』と叫んでいた」という。
ツォの焼身を知った夫と叔父である僧ツルティムは火を消し、まだ生きているツォを僧房に運び込んだ。そして病院に彼女を運び込むために車を用意し、車に乗せたところでツォは息を引き取ったという。
事件後、僧ツルティムは8日間警察により拘束され、焼身の現場を撮影したスマホの写真も削除されたという。夫であるケルサン・ゲルツェンはこれまでに3度尋問のため警察に呼び出されたという。
ソナム・ツォには2人の息子と3人の娘がいた。
ソナム・ツォが焼身抗議を行ったほぼ1ヶ月前の2月29日には、外地インドのデラドゥンで16歳の学生ドルジェ・ツェリンと内地カム、カンゼで18歳の僧ケルサン・ワンドゥが焼身を行い、2人とも死亡している。
ソナム・ツォは内地焼身抗議者の145人目。外地の6人を合わせ2009年以来の焼身抗議者の数はこれで151人になってしまった。
参照:5月6日付RFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/sonam-tso-self-immolation-2016-05062016114740.html
同英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/mother-05062016131403.html
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)