チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年10月17日
ナンチェンの高僧ケンポ・カルツェに2年半の刑
ナンチェンの人々の心の柱とも言われるチャパ僧院の高僧ケンポ・カルツェは2013年12月6日、四川省の成都で「国家の安全を脅かせた」疑いにより拘束され、その後10ヶ月以上チベット自治区チャムドの拘置所に収監されていた。
彼が拘束された後、彼の解放を求める地元の僧侶や住民による大規模なデモも数回行われ、多くの逮捕者を出している。地元の人々は4000人の署名を集め当局に提出したこともある。また、アムネスティー・インターナショナルも彼の解放を求める署名活動を行っていた。しかし、このような運動の成果なく、ついに最近彼に2年半(*1)の刑が言い渡されたことが判明した。刑期が2年半と比較的短かかったのは成果と言えるかも知れないが。
収監中にケンポ・カルツェは病気により衰弱しているという情報も流れていた。刑期が判明しただけで、罪状や今どこに収監されているのか、健康状態はどうなのか等については不明のままである。
ケンポ・カルツェは2011年、山一つ向こうにあるチャムド地区カルマ郷にあるカルマ・カギュ派の祖寺カルマ僧院の僧院たちが弾圧を逃れて自分の僧院に駆け込んだ時、彼らを匿った。このことが当局に知れ、この時から当局の監視の対象となっていたという。
参照:10月16日付けVOT中国語版
同チベット語放送
10月17日付けphayul
ケンポ・カルツェについてはこれまでにウーセルさんも何度か書かれているし、当ブログでも取り上げている。
ウーセル・ブログ「省境を越えて拘束されたケンポ・カルマ・ツェワン」
ウーセル・ブログ「逮捕されて47日になるケンポ・カルマ・ツェワンの逮捕1カ月前の記録」
高僧の解放を求めた16人拘束
チベット人の移動の自由が奪われていると訴えるケンポ・カルツェ 彼の解放を求める署名活動始まる
高僧等の解放を求め刑務所前で500人が座り込み
注*1:昨日(10月17日)刑期は「2年」とVOT等を元に伝えたが、その後RFA等により「刑期2年半」とされたことに従い訂正。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)