チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年3月22日
骨と皮となり刑務所を出された政治犯 長い苦しみの末死亡
「骨と皮に成り果て死を待つ政治犯が解放される」と先月末の当ブログで、マチュのゴシュル・ロプサン(སྒོ་ཤུལ་བློ་བཟང་།43)の状況を伝えた。その時点で彼は確かに生きていた。
今月21日付けTCHRD(チベット人権民主センター)リリースによれば、ゴシュル・ロプサンが3月19日の夜中、静かに息を引き取ったという。
「最後まで話すことができなかったが、ただ静かに両手を合わせて亡くなった」と現地から伝えられる。解放された後、4ヶ月以上床についたままだった。
2008年3月、甘粛省甘南チベット族自治州マチュ県ペルペン郷(རྨ་ཆུ་དབལ་པན།)で起った平和的抗議デモに参加したゴシュルはデモの煽動者とみなされ、その後、逮捕を逃れる逃亡生活を余儀なくされた。2年以上の逃亡生活の末2010年5月16日に発見、逮捕される。
写真1、2、自宅に引き取られた後のゴシュル・ロプサン。
逮捕後5ヶ月間、マチュ県の拘置所で尋問中激しい拷問を受けたと言われる。2010年10月中に12年の刑を受け、蘭州の刑務所に収監された。刑務所内でも拷問は続き、貧しい食事と共に彼は病み、衰弱して行った。刑務所側も何らかの治療を与えたらしいが、効果はなく、刑務所側はもう生きる望みは少ないと見なし、2013年10月27日に彼を家族の下に返した。
妻タレ(40)、息子イシェ(18)、娘ドルマ(15)が必死の介護を試みるも、最後まで話しをすることができず、食事もとることもできず、床に付したまま、衰弱し、死亡した。
その他参照:3月21日付けRFA英語版
同チベット語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)