チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年3月13日
ケンポ・カルツェの容態悪化 無窓独房にすでに3ヶ月
ナンチェンの高僧ケンポ・カルツェについてはこれまでに何度も報告している。去年12月初めに成都で拘束され、自治区チャムドの拘置所に送られ、すでに3ヶ月が経つ。
2月26日、家族が指定した弁護士が初めて面会を許された。弁護士がそのときの彼の状態を報告している。
ケンポ・カルツェは僅かな食べ物しか与えられず、「窓のない極寒の独房」に入れられているという。
ケンポ・カルツェは連行される前から結核と気管支炎を患っていたと言われる。それまで続けていた治療を、拘束された後はまったく受けられないという。
「彼の健康状態は非常に悪化しており、肝臓と肺を病んでいる。彼は血を吐き、背中と腹部の痛みを訴えていた」。彼に初めて面会した弁護士Tang Tian Haoはこのように語り、面会の後、当局に対し「法律通りに彼に定期的な治療を与えるよう」訴えた。
ケンポ・カルツェは拘束されて後、一度も身体を洗うことを許されていないという。そこで、弁護士はさらに、「彼が身体を洗うことを許し、太陽の光が届く部屋に移すこと」も要求した。
しかし、これに対し拘置所の警官は、「お前の要求をこのケースを扱っている部署に伝えよう」と答えただけだったという。
ケンポ・カルツェは今、特にかつて、逃げて来たカルマ僧院の僧侶たちを自分の僧院に匿ったという罪に問われようとしているという。これに対し、弁護士はそのような罪は非現実的であるとして、健康を理由に解放すべきであると主張するが、これを当局は拒否している。
ナンチェンの僧侶や信者たちは彼の健康が悪化しているという知らせを受け、非常に落胆し、心配しているという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)