チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年3月5日
ダライ・ラマ法王80歳(チベット暦・数へ年)の新年を祝うチベット人たち
先の3月2日はチベット暦の正月(ロサ)であった。2008年以降、去年まで相次ぐ焼身を受け、チベット人たちは中国への抵抗の印として、このロサを祝うことを控えて来た。今年はどうだったのか?
RFAが内外チベット人のロサの様子を伝えていたので、これを元に報告する。
今年はこのトレンドが変わったという。
アムドからの匿名希望のチベット人の報告によれば、「2008年以降、マロ(甘粛省甘南チベット族自治州)とツォロ(青海省海南チベット族自治州)ではロサが祝われることはなかった。それは犠牲になったり、今も獄中で苦しむ同胞への連帯を示すためであった」、しかし「今年、この地区のチベット人たちはダライ・ラマ法王が100歳以上生きられるようにとの思いを込め、肉とアルコールを断ち、丘に祈りの旗を掲げ、祈りや供養といった宗教的活動を行った。さらに、彼らは内外のチベット人が再び一つになることを祈った」という。
カムのカンゼ州セルタからの報告によれば、現地のチベット人たちはダライ・ラマ法王が80歳を迎える年の初めとして祝ったという。
「私たちは家の仏壇に(正月用の)カプセ(チベットのおかし)を飾り、ダライ・ラマ法王のお写真を掲げ、法王の長寿と法王の願いが叶いますようにと祈った」「大袈裟な祝いは行われなかった。多くの地区では、盛大な祝いは(法王の誕生日であるチベット暦)5月に行うことになっている」と現地の人は伝える。
亡命アムド人たちは「チベット暦で法王が80歳をお迎えになる今年は、大々的に祝うことに決めた」と話す。
伝統的習慣を後世に伝えるために
今年のロサに関し、チベット亡命政府首相であるロプサン・センゲはそのリリースの中で、内外のチベット人が伝統的な新年を送るようにとのメッセージを発した。
「ロサを祝うときには、宗教的伝統に従い、伝統的な服装を纏うべきだ。こうすることにより若い世代に伝統的な習慣を伝えることができる」「ルーツを忘れるなら、我々のアイデンティティーとチベット魂は衰退するであろう」と3月1日に発表されたリリースの中で語った。
カム、カンゼの住民は「私たちは首相のいう『(今年は)若い世代に伝えるために、伝統的なロサを行うべきだ』というメッセージを知っていた」といい、「だから、今年は派手な祝いを避け、とにかく伝統的な宗教的儀式に専念した」という。
また、南インドに住む若い亡命チベット人の一人は「私たちは2008年以来、ロサの祝いを行わずに来た。私はロサは祝われるべきだと思う。そうでなければ、若い世代がこの伝統の意味を忘れてしまう」と語る。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)