チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年9月26日
失踪後9ヶ月後 チベット人詩人の拘束が判明
成都の仕事場から姿を消し、その後9ヶ月間行方不明となっていたチベット人詩人が当局により拘束されていることが判明した。
2012年5月15日頃、ロプサン・ナムギェル(བློ་བཟང་རྣམ་རྒྱལ། 26)は仕事場である成都の仏陀文化センターから突然姿を消した。彼の家族や親戚はあらゆる手を尽くして彼の行方を探し続けたが消息は掴めないままであった。9ヶ月経ってやっと家族は彼が成都の拘置所に収監され、裁判を待っているところだということを知人から知らされた。しかし、拘束から1年以上経った今も面会は禁止されたままという。
ロプサン・ナムギェルはサンミック(秘密の目)という筆名でツォル(འཚོལ། 探索)と題された詩集を出版している。その中で彼は人生の目的、チベット人たちの現状、チベットへの忠誠心等を詠っている。
当局は1年以上経った今も彼を裁判なしに拘束し続けている。報告者によれば地区の警察は、彼がダライ・ラマ法王のスピーチと他の政治的内容を含む出版物を制作し配布したとの嫌疑を掛けているという。
家族は彼に会い、食料や衣服を届けることもできず、拘束が長引くに従い、秘密裁判により彼に長期刑が言い渡されるのではないかと非常に心配している。
ロプサン・ナムギェルは2008年にもマチュで大きなデモが起った時に逮捕され、後に解放されていた。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)