チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年6月22日
中国当局、5月27日に焼身、死亡したテンジン・シェラップは女性問題からと 彼の写真を海外に流したとして僧侶逮捕
中国当局が焼身抗議を政治的動機ではなく、個人的動機にするために嘘話しを考え出すということはこれまでにも沢山例がある。その多くは夫婦仲、恋愛問題のこじれというストーリーである。残された妻等に「原因は夫婦仲のこじれ」という書面にサインするなら多額の金を与えようと持ちかけたこともある。
今回、再び当局は5月27日にジェクンド州チュマレプ県で焼身、死亡したテンジン・シェラップ(31)http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51791083.htmlに関し、「恋人に振られたから自殺したのだ」とした。
6月19日付け人民網(人民日報ウェブ版)によれば、地元のチベット人僧侶(25歳、Rae-Bleakと英語で表記されるが元のチベット名は不明)が海外にテンジン・シェラップの写真を伝えたとして逮捕された。そして、この僧侶が本当は恋愛問題のこじれで自殺したのに、これを政治的焼身だとする嘘の情報を流したという。
人民網によれば、テンジン・シェラップは何年か前に離婚し、8歳になる娘と暮らしていた。5月15日に女友達と喧嘩し、彼女に拒否されたことが原因で5月27日に焼身自殺したという。
僧侶はシェラップの父親に近づき、焼身後の写真と生前の写真を撮影し、これをインドの僧侶に携帯から送ったとする。僧侶は罪を認めたと書かれている。
この写真を29日に海外のチベット独立を支持するウェブサイトが、チベットに関わる焼身として事実をゆがめた報道を行ったという。
亡命側に伝わった情報として、彼は焼身の数日前、友人たちに「中国の政治はよくない。このままではチベットの宗教や文化が消滅してしまう恐れがある。もう中国の支配の下では生きる事ができない」等と何度も話していたという。
中国の地方警察と役人は政治的焼身の責任を逃れるためと、家族やコミュニティーを陵辱するためことを目的にこのようなストーリーを作り出す。
参照:6月19日付け人民網 http://politics.people.com.cn/n/2013/0619/c1001-21889307.html
同英語版 http://www.china.org.cn/china/2013-06/19/content_29167045.htm
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)