チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年5月22日
フランスのテレビ局がラサ潜入取材に成功 貴重映像とインタビュー
フランスのテレビ局”France 24”のレポーターCyril Payenが8ヶ月待たされた後、やっと最近(日付は明記されていない)7日間の入域許可を得てラサに入り秘密裏に取材することに成功した。彼の見たものは「ダライ・ラマや人権団体が主張する『チベット文化は消されつつある』を裏打ちするであった」という。
「Seven Days in Tibet」と題され、全部で9分ほどの番組に編集され放映された。前半4分間において、チベット人や中国人へのインタビューを交えながら現在のラサの様子が映し出される。後半5分間は背景を説明する香港Human Rights WatchのNicholas Bequelinへのインタビューである。
Payenは「ラサに到着するなり、オーウェル的世界*(全体主義的管理社会)の監視下に入ることになる。まるで占領された都市のようだ。そこには、何千人もの軍隊や警官がいる。CCTVカメラ、監視パトロール、拠点捜査。これがここに住むチベット人の日常だ」と語る。
次に、パルコルで進められている商業開発の様子が写される。コルラ(右繞)するチベット人たちが掘り起こされた歩きにくい道を巡る。そんな街中でPayenは若いチベット人女性に「自由はあるか?」と質問する。彼女は勇敢に英語で答える。「ない、ない!今、私たちには全く自由がなく、人権もない」と答え、さらに「私は仏教を信じる者だ。私はダライ・ラマ法王を太陽のようだと見なす。でも、私たちはそれを口に出せない。もしも、本心を言えばツォンカン(監獄)に入れられる」と。
番組の中では「これまでに120人のチベット人が中国の圧政に抗議し、焼身している」として、焼身の映像も流される。
*Orwellian world(オーウェル的世界): George Orwell (1903-50):英国の小説家オーウェル的な;全体主義の管理社会の。 Orwellの近未来小説『1984年』(1949)より。
追記:動画がアクティブになっていなかったようで、失礼!
動画を見るには以下にアクセス>>>http://www.france24.com/en/20130520-china-tibet-demonstrations-buddhism-beijing-dalai-lama-human-rights
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)