チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年3月6日
突然拘束されたある僧侶の話
4日付けTibet Timesにチベット自治区ナクチュ地区ディル県で、理由も分からず突然拘束されたある僧侶の話が報告されている。チベット人がひとたび警察に拘束されれば、その後どのような目に遭わされるかの1つの実例である。
ディル県チャクリ僧院(འབྲི་རུ་རྫོང་ཆགས་རི་དགོན་པ་)の僧侶クンチョク・スパ(དཀོན་མཆོག་བཟོད་པ་俗名タシ・ニマ)は去年11月、ツァラ郷である家族の葬儀を行っていた。その時、2台の警察車両がその家の門前に止まり、「クンチョク・スパと言うやつがいるだろう。外に出て来い!」と言われた。僧クンチョクは自分は何も警察に呼ばれるようなことはしていないが、と思いながら外に出た。すると、突然車の中に押し込まれ連行された。
その後、ディル県の刑務所に送られ、そこで様々な尋問を受ける事となった。その刑務所では3日に1度しか食事が出されず、時には身体に毒水(?)を浴びせられ感覚を麻痺させられ尋問を受けさせられた。その他、様々な暴力を受け続けた。また、1ヶ月間真っ暗な無窓独房に入れられ、精神に異常をきたした。
今年1月には監視、脅迫の下で家族に電話させられ「刑務所の中で楽しくやっている。勉強することもできる。食事も良くて、寝るとこも上等だ」と言うことを強要されたという。
彼がいる同じ県の刑務所の中には、同じように何の罪で入れられているのか分からないというチベット人が他に100人ほどいるという。刑務所の中でチベット人が互いに話をするところが見つかると、「秘密の話」をしていると言われ、撲打されるという。
参照:4日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7407
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)