チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2013年1月28日
セルタで僧侶が1人デモ
昨日1月27日、現地時間午前10時半頃、カム、カンゼ州セルタ県セルタ中心街にあるセルタ(金馬)広場付近で、プンツォク・ジュンネ(ཕུན་ཚོགས་འབྱུང་གནས་又はクンケンཀུན་མཁྱེན་)と呼ばれる22歳(又は20歳)の僧侶が1人で中国政府に対する抗議デモを行い、その場で逮捕された。
目撃者の話によれば、「彼は抗議デモの最中『ダライ・ラマ法王に長寿を!ダライ・ラマ法王のチベット帰還を!』等とスローガンを叫びながら、何かが書かれたルンタを空に投げ上げた。直ちに、警官30人あまりと私服警官が大勢集まり、激しい暴行を加えた後、頭に黒い布を被せ連行して行った」という。
彼は病院に行くといって昨日家を出ており、今日帰ることになっていた。
彼はタシ・ギェペル・リン僧院の僧侶、セルタ県タクツァ郷カンツァ村(གསེར་རྟ་རྫོང་སྟག་རྩ་ཡུལ་ཚོ་རྐང་རྩ་སྡེ་བ་)の出身。父の名はロシェル、母の名はチュクポ。
参照:27日付けTibet Times チベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=7247
27日付けTibet Expressチベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/10053-2013-01-27-07-34-15
27日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/protester-01272013181546.html
同チベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/phuntsok-jungney-arrested-after-protesting-against-china-01272013111145.html
セルタではほぼ1年前の1月24日に大規模な抗議デモが行われ、これに対し部隊が無差別発砲したために死傷者がでている。(詳しくは:http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51728031.html 等)
去年、11月26日にはワンギェルという若者が焼身抗議を行った。彼は当局に連れ去られ、その後行方不明となり、今も生死の確認さえできていない。(詳しくはhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51770800.html)
その前3月12日にはティンレーという17歳の中学校生徒が焼身を図ったが、ガソリンを飲み過ぎたのか、火を付ける前に意識を失い、倒れ、逮捕されている。(詳しくはhttp://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51736114.html)
これら全ての抗議活動は、今回の1人デモと同じセルタ(金馬)広場で行われている。
抗議デモを行うには、逮捕される時の暴行、尋問時の拷問と長期の懲役刑を覚悟しないとできない。刑期を終えることができても、出所時に病気に罹っていたり、身体障害者となっていることも多い。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)