チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2012年12月30日

今年も年末に光をプレゼント ダラムサラ・アイキャンプ

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_DSC8081今年は日本から何と9人の眼科医を含む総勢16人が、ダラムサラまで光をプレゼントするために来られた。

アイキャンプと呼ばれるこの眼科医さんたちによるボランティア活動は2000年から始まり、今年で13回目である。毎年、年末の休みを利用してはるばるこんなインドの田舎までやってこられ、地元の大勢の人たちに白内障を中心とした手術を施される。今年も、28日から3日間の間に数百人を診察し、その内の50人に手術を行われる。今日も今まだ手術が行われている。毎日夜遅くまで働かれるのだ。

_DSC8091この素晴らしい眼科医さんたちの活動の母体になっているのはAOCA(アジア眼科医療協力会)という団体である。AOCAのホームページは>http://www.aoca.jp/index.html
アイキャンプについては>http://www.aoca.jp/JP/eyecamp.html
ダラムサラアイキャンプについては>http://www.aoca.jp/JP/eyecamp/DallamSara_eyecamp.html
と詳しいことはそれぞれのページを参照していただきたい。

参照として、このブログの過去記事2008年>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2008-12.html#20081226http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2008-12.html#20081229
2011年>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51549180.htmlもある。

_DSC8052最初のころはチベット人の比率が高かったが、最近は患者のほとんどはインド人になっている。チベット人は20%程とのこと。ほぼ無料で日本人の名医に手術して貰えるということで毎年大勢の人が集まる。日本では白内障等はそれほど酷くないうちに医者にかかるので、全盲に近くなるまでほっておかれるという人はまずいないであろう。しかし、ここでは毎回ほぼ全盲状態の人も大勢来るという。そういう人にとってはこの手術はまさに「光をプレゼント」されたという実感があるのだ。

_DSC8112チベットの尼僧を診察室に導くボス格の柏瀬先生。柏瀬先生は2002年から1年間ダラムサラに滞在し、眼科医として活躍されていたことがある。なじみの旧友である。

ここで、今回日本から来られた16人全員を紹介する。
今回の団長であり11回目の岡田明先生、次期団長であり5回目の浅野宏規先生、12回来られてる柏瀬光寿先生、福田慎一先生、星崇仁先生、藤川正人先生、田寺正樹先生、布谷健太郎先生、研修医の須賀みつきさん、看護婦の沼田美紀さん、眼科学生の里村英章さん、眼科学生の中西潤さん、マネージャーの古寺瑞代さん、通訳・コーディネーター(チベット医学アムチ)の小川康さん、アルコンという眼科用医療品専門会社の山根康作さんと田宮千佳民さん。

_DSC8117診察中の柏瀬先生。

一日目に診察し、手術を必要な人を選び、眼内レンズ等を用意する。

この日は夜10時頃まで診察を続けたそうだ。

_DSC8236今回は大勢のお医者さんが来られた。これを見て私が「こんなに大勢来られるなら、来年とかにはTCV(チベット子供村)にも手を伸ばして、手術だけじゃなく目の一般診療もやったらいいんじゃない?喜ばれると思うよ」と言った。グループはこれに即反応され、さっそく次の日アポ無しでTCVに数人の先生が行くことになったのだった。

行ってみると、その日は気付けば土曜日の午後で事務所は閉まってた。そこで、せっかく来たことだし、ホームを回りながら適当に目が悪い子を探してみようということになった。が、長い冬休みに入った学校に残っている子は意外と少ないことが判明。ホームそれぞれに残っているのは5、6人だけというところが多かった。

この写真はベービールームで見つけた「涙が止まらない」という小さな子供を診察する研修医の須賀みつきさん。

_DSC8224昼寝中の子供の目を無理やり開き診察。それでもこの子は泣きもせず、笑っていた。

_DSC8237手術風景。右手から執刀を監視するのが柏瀬先生。左手が岡田先生。今回は執刀医が多いので交代で手術されていた。それでも、日本ではせいぜい一日に5人までというが、ここではそれ以上を相手にされる。

_DSC8312手術中の次期団長浅野先生。

先生は2年前にご結婚されたそうだが、なんとそのきっかけを作ったのは当ブログだったという。詳しい経緯は省かせてもらうが、これは本当の話である。こんなブログでも役に立って本当によかった!末永くお幸せに。

_DSC8299このように最初は白い目も、平均15分から20分の手術後には、、、

_DSC8289このように黒い目に変わる。

目の手術というものは手術の中でも非常に繊細、微妙な手術である。腕に自信がある先生でないとできないらしい。

_DSC8315手術中に停電! ということが何度もあった。しばらくするとジェネレーターが回り電気は回復するのだが、突然起るので、しばし唖然となり懐中電灯を点け、待つしかない。

停電中、柏瀬先生にここで手術することの困難さについて聞いてみた。「いやあ、アウェーはやっぱり違いますよね。このように突然停電になるし。手術用顕微鏡の質が悪くて見えにくいし、ベッドが眼科用じゃないしね」とのこと。「これまでに大変なことはなかったですか?」と質問。「そうね、嘗て目もほぼ全盲、耳も聞こえないという人の手術をした時、突然暴れ出し、大変なことになった。目も耳も両方だめだったから恐怖心からそうなったのでしょう。最後になんとかしましたがね」と。

_DSC8306手術室に貼られた、チベット語とヒンディー語の手術中用語。

_DSC8325無事手術が終わって、手術室を後にするチベット人のお年寄り。

眼科医というのは実に素晴らしい職業である。特にこのような世界の僻地では役に立ち、喜ばれること間違いなしだ。

皆さん、ご苦労さまでした。感謝!感謝! よいお年を!

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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