チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年10月19日
ザチュカ、ウォンポ僧院からさらに7人の僧侶が連行される
ザチュカ(セルシュ 石渠)、ウォンポ郷に突然大勢の部隊が押し掛け、住民を再教育集会に追い立て、5人を連行したという話は昨日報告した。昨日から今日にかけ、ウォンポ僧院僧侶7人がさらに連行されたという報告が先ほど入った。Tibet Timesによれば、15日に連行された5人もウォンポ僧院の僧侶だという。
18日には僧院の機械係りの僧侶1人と、教師2人が連行された。その後、警官がその教師2人の僧坊に踏み込み20点余りの書き物を押収した。また、今日19日の早朝、さらに事務係りの僧侶を含む4人の僧侶を連行、午後には僧侶を2つのグループに分け先月7日校庭にチベット国旗を掲揚し、「チベット独立」と書かれた紙切れを撒いた犯人を特定するために、僧侶一人一人の筆跡を鑑定するということが行われたという。
チベット国旗が掲揚された傍に撒かれていた、赤い字で「プーランツェン(チベット独立)」と書かれた紙切れ
筆跡鑑定を行っているということは、すでに何人も連行して、おそらく拷問付きの尋問で犯人(?)を吐かせようと試みるも、未だ特定できていないと思われる。
過去にこのウォンポ郷で起った事件について、昨日書き忘れていたことが1つあった。2008年のことであるが、4月に当局はウォンポ僧院に対し中国国旗を掲揚することを強要した。しかし、僧侶たちはこれを断固拒否した。これに怒った当局は僧院だけでなく、回りの民家にも押し入り破壊の限りを尽くした。その時、部隊がある家に踏み込み、掲げてあったダライ・ラマ法王の写真を地に叩き付け、これを踏みつけた。これを見たその家のトリ・ラモというチベット人女性は「なぜ師の写真を飾ってはいけないのか」と怒鳴り、さらに法王が一日も早くチベットに帰還されますようにとのスローガンを叫び、その後首を吊って自殺したという。関連過去ブログ>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51004000.html
参照:19日付けTibet Times チベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6771
19日付けphayul http://www.phayul.com/news/article.aspx?id=32303&article=Five+arrested+in+Wonpo+for+raising+Tibetan+flag
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)