チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年10月18日
ドカル僧院から4人/タムディン・ドルジェの葬儀/シルカル僧院2人刑期8人連行/ザチュカで5人
ドカル僧院僧侶4人、焼身者の遺体を保護し、写真を撮ったとして連行
今月6日にサンゲ・ギャンツォ(27)がツゥ(ツォエ 合作)から10キロ離れたドカル僧院の仏塔前で焼身し、死亡した後、すぐに部隊が出動し、ドカル僧院は包囲され、何人かも僧侶が連行されそうになった。しかし、その時には僧侶と付近の住民が抵抗し、これを阻止する事に成功した。
その後も毎日、警官が僧院内に入り、僧侶の尋問を続けていた。そして、数日前に僧タシ・ギャンツォが連行され、昨日17日には大勢の武装警官が僧院内に押し入り、僧坊から僧院の出納係り僧ジグメ・ギャンツォ、会計係り僧ケルサン・ギャンツォ、僧クンチョク・ギャンツォ、僧タシ・ギャンツォの4人が連行された。
報告者によれば「彼らはサンゲ・ギャンツォの遺体を保護し、写真を撮ったとして連行されたものと思われる」という。
参照:17日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/monks-10172012174610.html
同チベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/four-monk-arrested-from-dokar-monastry-in-amdo-10172012134217.html
昨日17日の朝、13日にツゥ僧院仏塔前で焼身、死亡したタムディン・ドルジェ(50歳半ば)の葬儀が行われた。
葬儀が行われたツゥの丘は部隊により完全に包囲され、この丘に通じる道の傍や建物の屋上には大勢の警官が配備されていた。それでも、この地区一番の高僧の祖父であるタムディン・ドルジェの葬儀に参加しようとする人は後を絶たず、数千人のチベット人が参加し、悲しみを表し、厳粛な追悼の儀式が行われた。
参照:17日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/tamdin-dorje-10172012151701.html
ジェクンド(ケグド、ユシュ、玉樹)州ティンドゥ県ガトゥ郷(ཡུལ་ཤུལ་ཁྲི་འདུ་རྫོང་སྒ་སྟོད་ཡུལ་ཚོ་)にあるシルカル僧院(ཉ་འཚོ་ཟིལ་དཀར་བཤད་སྒྲུབ་དར་རྒྱས་གླིང་དགོན་པ་)は今年に入り、特別の弾圧対象となっている。
今年2月8日のラカルの日に大規模な抗議デモを行っている。この時のビデオと記事>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-02.html?p=2#20120211
今年6月20日には、元シルカル僧院僧侶テンジン・ケドゥプ(24)とンガワン・ノルペル(22)が焼身抗議を行っている。詳しくは>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/2012-06.html#20120620
テンジン・ケドゥプはその場で死亡したが、ンガワン・ノルペルは焼身後一旦このシルカル僧院に匿われた。
そして、9月1日には部隊が僧院に押し掛け、5人の僧侶が連行された。http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51760361.html
RFAによれば、最近この内の2人、僧ソナム・シェラップと僧ソナム・イクネンにそれぞれ2年の刑が言い渡されたという。裁判は西寧の裁判所で行われたが、家族にも知らされず秘密裁判であった。罪名も不明である。
さらに、10月1日には僧テンジン・シェラップが、10月10には新たに7人の僧侶が連行されたという。9月1日に連行された残りの3人とともに、彼らの居所は不明のままである。
参照:16日付けRFAチベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/Two-Tibetan-monks-sentenced-Xining-10162012150459.html
ザチュカで5人逮捕
今月14日、カム、ザチュカ(セルシュརྫ་ཆུ་ཁ་དབོན་པོ་ཞང་カム四川省カンゼチベット族自治州石渠)ウォンポ郷に突然、大勢の部隊が現れ、道路を閉鎖、情報網も遮断された。当局は住民を集会に駆り立て、愛国再教育を始めた。直前に何か事件が有ったわけではなく住民はなぜ突然このようなことが起ったのかと戸惑った。
このウォンポ郷にはゲルク派のウォンポ僧院という名刹がある。2008年3月10日、セラ僧院僧侶15名がツクラカン前でデモを行った。これはラサ蜂起のきっかけとなった。その15人の内8人はこのウォンポ僧院からセラに勉強に行っていた僧侶たちであった。その時からこの僧院は当局の特別な監視対象となり、これまでにも何度も再教育を受けさせられている。
また、今年2月4日には学校の校庭に掲げられていた中国国旗が下ろされ、代わりにチベット国旗が掲げられ、チベットの自由を訴えるチラシが撒かれた。9月7日にも同様の事件が起っている。詳しくは>http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51761015.html
15日、このチベット国旗掲揚事件に関係したとして5人が逮捕されたという。
参照:18日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6767
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)