チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年9月14日
「ジクデル(恐怖を乗り越えて)」の制作者ドゥンドゥップ・ワンチェンに国際的賞
ジクデル(日本語版タイトル「恐怖を乗り越えて」)の制作者ドゥンドゥップ・ワンチェン氏に毎年「勇気あるレポーター」に贈られる国際的賞が与えられることになった。
ジャーナリストの安全を擁護するNYベースの世界的団体である「ジャーナリスト保護委員会 the Committee to Protect Journalists(CPJ)」は今年の「国際報道自由賞 International Press Freedom Awards」をドゥンドゥップ・ワンチェン氏はじめ4人の「命を掛け自由を犠牲にし、権力の悪用と人権侵害を暴いたレポーター」に与えると発表した。
ドゥンドゥップ氏以外に今年この賞を受賞したのはブラジルのMauri Konig氏、リベリアのMae Azango氏、キルギスタンのAzimjon Askarov氏である。全員、真実を暴いた報復として当局から暴力、脅迫、拷問を受けている。
「我々は真実への献身が故に高い代償を払う事になった、これらのジャーナリストに鼓舞される」とCPJ 代表の Joel Simon氏は語り、さらに「この内の2人、Azimjon Askarov 氏(無期懲役)とドゥンドゥップ・ワンチェン氏(懲役6年)は彼らの批判的レポートが故に逮捕され投獄されている。彼らが解放されるまで我々は安心できない」と続ける。
ドゥンドゥップ・ワンチェン氏は北京オリンピックを前にしたチベットで普通のチベット人たちからオリンピックやチベットの状況に対する意見をビデオに収録したことで、2008年3月26日に逮捕された。そして、2009年12月28日に秘密裁判により、「国家分裂煽動罪」により6年の刑を言い渡され、現在、青海省の強制労働キャンプに収容されている。
彼が集めたインタビューは逮捕前にスイスに送られ、従兄弟の編集によって「ジクデル」という25分ほどのドキュメンタリーにまとめられ、日本を含め世界30各国で上映された。彼は現在B型肝炎を患っていると言われ、妻のラモ・ツォが世界中を周り彼の解放を訴え続けている。
受賞式は11月20日にNYで行われるという。もちろん、ドゥンドゥップ氏は出席できない。現在アメリカにいる、妻のラモ・ツォが代理として招待されるかも知れない。
ジクデルLeaving Fear Behindの英語版はyoutubeで見る事ができる。>http://www.youtube.com/watch?v=ANZZa5IabJ4
参照:関連CPJホームページhttp://cpj.org/awards/2012/honoring-tenacity-and-courage.php
14日付けphayulhttp://www.phayul.com/news/article.aspx?id=32118&article=Dhondup+Wangchen+to+receive+2012+International+Press+Freedom+Award
14日付けTibet Timesチベット語版http://www.tibettimes.net/news.php?showfooter=1&id=6614
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)