チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年8月2日
「人民解放軍の日」にセルタで単独デモ
僧クンチョク・ヤーペル(写真は全てTibet Expressより)
RFAその他によれば、8月1日午後1時頃、カンゼチベット族自治州セルタ県セルタの中央広場で1人の僧侶が中国政府に対する抗議の声を上げ、その場で暴行の後、逮捕された。この日は「人民解放軍建軍記念日*」であった。
僧侶の名前はクンチョク・ヤーペル(དཀོན་མཆོག་ཡར་འཕེལ་ Tibet Express はクンチョク・ギェルツェンདཀོན་མཆོག་རྒྱལ་མཚན་又はクンチョク・キャプདཀོན་མཆོག་སྐྱབས་と伝える)、22歳。セルタ県ニトゥ郷出身(གསེར་རྟ་རྫོང་སྙི་སྟོད་ཡུལ་ཚོ་)、タルン僧院(རྟ་ལུང་དགོན་པ་)(Tibet Express によればプウ僧院ཕུའུ་དགོན་པ་)僧侶。
彼はルンタを空に投げ上げながら、「ダライ・ラマ法王のチベット帰還を!パンチェン・ラマ解放!チベットに自由を!チベットが独立しますように!」等のスローガンを叫んだという。投げ上げられたルンタの裏にも同様の祈願が書かれていた。また、身体に「仏教の旗」を描いていたともいう。
間もなくして部案部隊が駆けつけ、多くの人たちが目撃する中、彼はぼこぼこに殴られ車に押込められてどこかに連れ去られたという。その後の消息は不明。
*1927年8月1日の南昌起義を建軍記念日とし、軍の徽章には紅星に「八一」の字が、軍旗は紅地に黄色で星と「八一」の字があしらわれている。
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彼が解放を求めたパンチェン・ラマはもちろん法王が認定した本物と言われるゲンドゥン・チュキ・ニマのことであるが、一方の偽パンチェンと呼ばれるギェルツェン・ノルブは先の7月29日、パンチェン・ラマの本家僧院であるシガツェのタシルンポ僧院を訪れた。
当局は彼の訪問を前に地元のチベット人たちに、彼を歓迎するために集まるよう命令した。そして、当局を恐れて数百人のチベット人が集まったという。しかし、一様に彼には無関心で歓迎する様子も見せなかったという。
本物なら数百人なんて数じゃなく、なにも言わなくても数万人が集まっていたことであろう。
参照:8月1日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/detained-08012012140549.html
同チベット語版http://www.rfa.org/tibetan/sargyur/kunchok-yalphel-sarta-protest-08012012153853.html
8月2日付けTibet Express チベット語版http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/8845-2012-08-02-04-00-01
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)