チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年5月31日
カム旅行記 その6 タウ後編
ニンツォ・ゴンパの下の方にある小さなお堂にお母さんとともにお参りに来てた少女。
お堂にいた、老僧に「焼身についてどう思うか?」と聞いてみる。親指を立てながら「ヤポドゥ(いいと思う)。彼らは勇気がある。チベットがこんなだから、彼らのような人が出ても不思議じゃない。ダライ・ラマ法王もお年だから、早く帰って来てほしいのだ。」と答えた。
この辺の家はとにかく、材木をこれでもかというほど使う。柱の太さは30~40cm、梁も垂木も日本では考えられないくらい太い。いくら材木が豊富だといっても、これは無駄使いではないかと、ケチな日本人は思う。日本だと柱は10.5cmだ。それでもそこそこ地震にも強い家を作る事はできる。この辺も大きな地震に何度か見舞われていて、耐震設計のつもりで部材を大きくしているのかも知れないが、壊れたときのことを考えると返って危ないんじゃないかと思ってしまう。一階は石積みの家が多いが、つなぎは泥のみ。地震の時には一階が壊れると思われた。
そうではあるが、外観はなかなか決まっており、立派で奇麗だ。一階の、大きな石と平たい小さな石を組み合わせた積み方が独特で、二階のログハウスもいい。
平面は、ほぼどの家も一緒と思われた。二階にテラスを設け、その角にトイレを作る。
小窓の付いた、塔状のこのトイレが美しい装飾を伴って、目を引く。
窓縁はここでも白く塗るられていることが多い。
屋根は陸屋根と傾斜瓦屋根が半々ぐらい。
陸屋根の場合は四隅を跳ね上げる。
道ばたでメンコのような遊びをしていた子供3人。「一緒にやろうぜ」というも、取り合ってくれない。写真を撮ろうとすると、真ん中の女の子は「ふん、撮らせるもんか」と横を向く。
それでも、カメラを向けると、「ぎゃ!やめんかい!」と何かどなる。カモ(カムの女)は子供の頃から、可愛いが、おそろしい。
バイクは馬に等しい。シートの上には必ず絨毯が敷いてある。ついでに冷えないようにとガソリンタンクの上にも。
入り口の傍に掛けられた、魔除け用ヤーの頭の骨。ここまで、凝った装飾の入ったものは見た事がない。
タウの大きなチュテン(仏塔)の近くに大きなマニ塚がある。その周りを回るお年寄りたち。
タウの象徴とも言える大きな多門式チュテン。高さは30mほどか?
2008年以降、街の人々が大勢集まり、中国に対する抗議の印にこの仏塔を周り、集会を開いたということもあった。
チュテンの中には回廊がある。そこに潜んでいた若いカモ3人。特に真ん中の子が可愛いとカメラを向けるも、(今度は恥ずかしがられて)なかなか撮らしてくれなかった。
それにしても、タウには警察の車が目立って多かった。、街中の交差点には必ずと言っていいほど公安の車が停まっていた。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)