チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年4月13日
カンゼで当局が土地を強奪、抗議した4人を逮捕
当局による土地強制収容、それに抗議する農民と当局が衝突、という話は中国内地ではよく聞く話だ。農民が焼身抗議に及んだということも度々ある。同様の事態はもちろんチベットでも起る。マフィア当局は強奪し、逆に抗議する土地所有者を連行し拷問する。
12日付Tibet Expressより。http://www.tibetexpress.net/bo/home/2010-02-04-05-37-19/7961-2012-04-11-13-05-15
農地を強奪し、抗議したチベット人4人を逮捕
南インド、セラ・ジェ僧院テホル学堂の僧ペマ・ツェワンが現地情報として伝えるところによれば、今月10日、カンゼ県地方当局はチベット人商人ソナム・ゴンポの私有地の上に、突然政府関係の建物の建設を始めようとした。ソナム・ゴンポは政府役人に建設中止を求めた。当局は相談に応じるどころか、その日、武装警官隊を送り込みソナム・ゴンポとカダク村のケドゥップを連行した。
これを知り、100人以上のチベット人が抗議のために集まった。ソナム・ゴンポの家族は役人に対し「私たち家族には生活のための農地はここしかない。お前たちがこの土地も強奪するというなら、生きるすべがなくなる。それぐらいなら、今すぐに私たちを殺せ!」と叫んだ。そして、土地造成のために当局が持ち込んだブルドーザーの前でソナムの妻が横になった。武装警官隊は彼女とロバションネル村のサンゲ・ケルサンを拘束連行し、集まっていた村人たちを威嚇した。
違法な話をしたとして拘束・拷問
48歳ぐらいと言われるソナム・ゴンポは2009年3月19日にも「違法な話をした」として、カンゼの茶店にいたところを突然拘束された。その後、4ヶ月ほど拘束されていたが、その間激しい拷問を受け、病院に運び込まれた。その上、所有していた14万元相当の車とその中に積んであった大量の冬虫夏草も当局により取り上げられた。
政治犯の解放を喜んだとして拘束
さらに、去年3月31日、ツィツァン僧院の政治犯僧テンジン・ンゴドゥップと僧ロヤンが解放された時、地元のチベット人たちは彼ら2人の解放を喜び、みんなで暖かく迎え入れた。これを知った当局はこの歓迎会を組織したとしてソナム・ゴンポ始め7人を拘束した。7人とも1ヶ月後に解放された。しかし、数日後ソナム・ゴンポは何の理由も示される事なく再び拘束され、その後カンゼの刑務所に1年近く拘留されていた。最近解放されたが、今度は彼の土地が取り上げられたというわけだ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)