チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2012年2月29日
「葬儀を上げる僧院がなくなった。お前たちが葬儀を上げろ!」と遺体を庁舎に持ち込む ディルの現状
以下、主に29日付けRFA英語版http://www.rfa.org/english/news/tibet/bomb-02292012000629.htmlを参照。
ディルの位置は(グーグルマップ)http://p.tl/Mz9p
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チベット自治区ナクチュ地区ディル(འབྲི་རུ་རྫོང那曲地区比如県)では最近当局の弾圧を避けるために僧侶たちが僧院から逃げ出し、空になってしまった僧院が沢山あるという。
今週に入り当局は「僧院や尼僧院に帰らない僧侶や尼僧は逮捕する」と脅した。これに対し僧侶たちは「僧院から中国の役人たちが引き上げるなら帰ろう」と答えたという。
現地と連絡を取った在インドのあるチベット人は、「僧院は空で宗教的儀式は葬式を行う場所が無くなった。僧院には代わりに大勢の中国の役人が住んでいる。これが僧侶たちが僧院を去った原因だ」という。
「チベット人の中には家族の遺体を政府庁舎の前に持って行き、葬式をしてくれるラマも僧院も無くなった。この遺体をどうすればいいのか?」と声を上げる者まで現れたと、亡命議会議員ケルサン・ギェルツェンが伝える。
(この部分、あるツイッター情報によれば「僧侶たちが遺体を庁舎の前に持って行き、お前たちのせいで葬式を上げる場所が無くなった。だから、お前たちが葬式を上げろ!」と抗議の声を上げた。という)
「政府はチベットの習慣を全く尊重しない」とケルサンはコメントする。
中国当局は最近再びナクチュ地区の僧院に「工作隊」を送り込み、「愛国再教育」を行っている。
「去年の11月からチベット自治区政府は、約2万人の役人を様々な村や僧院に送り込み愛国再教育を進めている。その結果多くの僧院が閉鎖された」とTCHRD(チベット人権民主センター)の副所長であるジャンペル・モンラムはいう。
火曜日(28日)政府系チベット・デイリーは自治区主席ペマ・チュリン(又はペマ・ティンレー)が「緊張が高まるであろう3月の間、政府幹部は持ち場を離れず、如何なる問題も起こさないよう、監視を強化せよ」と述べたことを伝えた。<この部分参照28日付サーチナ(日本語)http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0228&f=politics_0228_017.shtml
今月8日の「世界一斉行動日」には、このディルでも大きなデモがあった。
かつてディル・ペカル僧院に属していた10人の僧侶が丘の上で葬儀を行った。「その帰り道、彼らは政府庁舎の前で立ち止まり、チベット独立、法王帰還、僧院とチベット人の自由を求めるスローガンを叫び始めた」と現地と連絡を取った在インドのチベット人が伝える。
「700~800人の地元チベット人が彼らの抗議に加わった」
「彼らは1時間半ほどの間、行進しスローガンを叫び続け、解散した。その時には誰も逮捕されなかった」
「次の日、5台のトラックに分乗した武装警官隊がディルに来て、言う事を聞かない場合は発砲するぞ、と脅した」
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)