チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年11月12日
ウーセル・ブログ「ラサの地下水が神力不動産に吸い尽くされてゆく…」
昨日のウーセルさんのブログを@tibetweeterTYOさんがさっそく翻訳して下さった。
原文:http://woeser.middle-way.net/2011/11/blog-post_11.html
—————————————-
ウーセルさんブログ「ラサの地下水が神力不動産に吸い尽くされてゆく…(拉萨地下水快被神力房地产抽光了……)」2011年11月11日(金)
写真は2011年8月中旬、ウーセル撮影。クリックすると大きくなります。
温州商人がチベット自治区政府高官の子女と協力のもと設立した西蔵神力不動産開発有限公司は2011年、ラサ旧市街と新市街(北京中路と朶森格路)が交わる地点に“神力タイムズスクエア”を建設。“ラサの商業的ランドマーク”を自称し、外観は北京三里屯villageにそっくりである。地下駐車場を造るために地下水の水抜きを行う必要があり、このために敷設された排水管が北京東路と林廓北路を横切り、ラサ市街の半分を巡っているが、全て地面の上に剥き出しで大通りをぶち抜き、現在も未完工である。
史書の記録によれば、ラサは元々“キシュオタン”という名の大きな沼沢地で、中央に湖が一つあった。1300年以上前、ソンツェンガンポ王の命により、チベット人は湖を土で埋め立て、大昭寺(チベット語でジョカン、ツクラカン)を創建。ジョカンの中心の仏殿には今なお壁面に貼り付いた空心の石柱が保存され、寺院の下に湖があるとのいわくから、信徒がこの空心の石柱に耳をつければ、今もかすかな水の音を聞くことができると。これはラサの旧市街地の地下水の豊富さを説明している。
ラサの庶民は神力不動産の地下水抜き取りが今も終わらないことに対し、大きな憂慮と不満を覚えている。多くの市民がこの問題について関連部門に申し立てをしたが、得られた回答は完全に相反、水抜きの制止どころか更なる進行であった。例えば“ラサ市水利局は神力タイムズスクエアの地下工事での取水推進に対し試験工事を許可するhttp://www.lasa.gov.cn/Item/23800.aspx”、“このプロジェクトの区域は旧市街の中心地帯にあり、周辺には人員や建物が密集しているが、深さ平均20-23mの雨水井戸52口を施工し、降水量は多い。従い水資源論証工作の展開は、建設プロジェクトの建設期間における安全で信頼に足る水量と水質を保証するだけでなく、周辺の地質環境に対する影響を低め、水資源の有効利用と効果的保護を促し、水資源の持続利用を保証するであろう”としている。
西蔵神力不動産公司は神力タイムズスクエアを「このプロジェクトはラサ市の名刺になると同時に、都市随一の応接間となろう。全世界がラサを認め、ラサを熱愛し、聖なる都市の真の意味を心から理解するための最初の選択となろう」と公言している。しかしこのプロジェクトがラサ市及びチベット自治区の官僚と密接に関わっていて、官商間の利益協力であり、古き街の歴史と地理を省みないあらたなプロジェクトである以上、ラサに対し取り返しのつかない巨大な破壊をもたらす可能性もあるだろう。
最近、ラサの市民がミニブログを通じ、「神力不動産の建設プロジェクトの住所は元の都市建設局に位置している。地下2層を造るため、水の抜き取りは一年の長きに亘っており、このような水抜きの方式では穴が出現するおそれがある。一旦穴ができれば、1500m以内にあるポタラ宮、ジョカン、ラモチェなどの多くの古い建築が補うことのできない損失を被り、千年の文物も一朝にして烏有に帰するであろう。また、地下水を抜き取ってラサの地下水資源を浪費すれば、数年後にはラサ旧市街は重大な水不足に陥るであろう。この件に皆さんのご関心を頂き、相互に転送されたし」と呼び掛けた。
最も新しく得た情報では、今年5月、“神力タイムズスクエア”そばの北京東路のツェムンリンに近い位置(バス停外)の地面に明らかに小さい割れ目があり、長さはおよそ1.2mあったという。この建設中の“神力タイムズスクエア”では今も休むことなく、朝から晩まで水抜きが行われている。その向かいのテンギェリン一帯では2度の断水が起きており、それぞれ4時間と1時間ぐらいであった。断水の原因は明らかになっていないが、ここに住んでいる市民は皆、神力の工事が原因だと話している。
ラサ市民は次から次へとこの件を取り沙汰している。声望ある知識人は水抜きをすべきでないと言い、庶民の関心もますます高まっている。ある携帯電話ショートメールによれば、民衆が12月3日朝10時に“神力タイムズスクエア”に行き抗議を行おうと言っているという。これは受け取ったショートメールの話であって、状況がどうなっているのかは、皆も知らない。大規模な抗議の成功は難しいだろうが、この件に関心を持つ人は増えてきている。昨日(11月10日)ラサ市政府の官僚が“神力タイムズスクエア”を視察したが、副市長だったという人もいる。
ここに、チベット人のネット友達の新浪微博での討論を転載する。
@桑東有縁:神力不動産がラサ旧市街の地下水を1年以上抜き取ってる証拠だ!まだやってるんだよ!
@黒面具:ラサ青年路の軽車両車線はこの水道管に占領されてるよ!
http://ww2.sinaimg.cn/large/44ccde83jw1dk30ytsw4lj.jpg
@桑東有縁:5000万でラサ旧市街の全地下水を買い占められるのかな?//@羊兄://西蔵神力不動産開発有限公司は2006年創立、ラサ招商の引資企業の一つで登記資本は5000万元。翌07年に嘉和麗景ビルで憧れのブランドに。2011年神力タイムズスクエアを建設。このプロジェクトは落成したらラサの街の名刺、都市第一の客間になると。
@Sherab:近年、不動産の開発プロジェクトに伴い、豊かな水資源も重大な打撃を受けている。10年前のラサでは1mも掘れば湿った土を見ることができ、多くの旧市街の人民院の中にも住民の掘った手動の井戸があったが、現在は一部の地域では5m掘っても見られない。地下水源のなんと減ったことか。//@pubher://@平Tsok//@無遠之夢://@桑東有縁:神力不動産がラサ旧市街の地下水を1年以上抜き取ってる証拠だ!
@桑東有縁:この件は非常に重大だ。皆厳しく対応せねばならない、皆で転送しよう!//@根頓:この俗悪なマーケットが吸い上げた水はラサ住民が30年間飲める量に相当するそうだ。配水管の上に緑のカーペットがあって小花の盆が置かれていて、私たちを踏みつけないでねとか書いてあるけど、一体誰が誰を踏みつけてるんだか。
@貢嘎愛青蛙:{転載}神力不動産の建設プロジェクトの住所は元の都市建設局に位置している。地下2層を造るため、水の抜き取りは一年の長きに亘っており、このような水抜きの方式では穴が出現するおそれがある。一旦穴ができれば、1500m以内にあるポタラ宮、ジョカン、ラモチェなどの多くの古い建築が補うことのできない損失を被り、千年の文物も一朝にして烏有に帰するであろう。この件に皆さんのご関心を頂きたし。
ラサのネット友達が撮った、建設中の“神力タイムズスクエア”:
図説:2011年3月14日、ラサの神力タイムズスクエアは2層の地下駐車場建設のため、地下水を抜く工事を行わねばならず、北京東路や林廓北路をぶち抜いて配水管を敷設……
関連情報を付す:
一、 神力タイムズスクエアのサイト:
http://www.xzsljt.com/CompanyInfo.aspx
二、 神力タイムズスクエアのテナント広告
http://lasa.58.com/shangpu/7408454442504x.shtml
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)