チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年10月30日
作家、僧侶の逮捕が続く
10月19日、チベット人作家チュパ・ルギェル(གཅོད་པ་ཀླུ་རྒྱལ་筆名メツェམེ་ལྕེ་ )が甘粛省蘭州の自宅で当局により拘束された。彼は甘粛省民族出版社に勤め、そのチベット語編集者である。拘束時、公安は家族に対し罪状を明かさず、現在の居所も不明。
アムド、ヤジ県ドビ郷(མདོ་སྨད་ཡ་རྫི་རྫོང་རྡོ་སྦིས་ཤང་)出身。西南民族大学卒業後、西北民族大学に研究生として在籍。青海チベット新聞社を経て甘粛省民族出版社に務めていた。仕事の合間に多くの書も著している。༼མི་གཞིའི་སྙིང་སྟོབས། ༽(中国名《人性毅力》)༼ཁུ་སིམ་ཁད་ཀྱི་དཀྲོགས།༽ ༼དགེ་ཆོས་རྒྱང་མཇལ། ༽༼རང་གྲོལ་ཞིབ་འཇུག༽ ༼ཕྱིར་རྟོག༽「ゲンドゥン・チュンペー研究」その他多数。
彼は発禁となり、これに関わった多くのチベット人作家が先に逮捕されている雑誌「シャル・トゥン・リ(東のホラ貝の丘)」にも関わっていたことがある。ブログ上にも多くの記事を発表している。
TCHRDによれば2008年以降強まった中国当局のチベット知識人弾圧政策の下、すでに65人のチベット人作家、学生、芸術家、文化人が拘束され、拷問を受け、刑期を受けている。
参照:26日付Tibet Times チベット語版http://p.tl/JWKb
27日付ウーセル・ブログ http://p.tl/1A7J
28日付 TCHRDリリース http://p.tl/Bh77
同じくチベット人作家であるゾレップ・ダワ(ཇོ་ལེབ་ཟླ་བ་)に今月初めバルカムの裁判所が3年の刑を言い渡した。罪状不明。
2010年10月1日、成都で突然拘束され、1年ほどの間ンガバ州ドチュ・ゾン(ཁྲོ་ཆུ་རྫོང་、金川県)の拘置所に拘留されていた。
ゾレップ・ダワはンガバ県ゾレップ村(རྔ་བ་རྫོང་ཇོ་ལེབ་སྡེ་བ་)出身、39歳。ンガバ民族中学校の教師であり、チベット語の月刊誌「༼དུས་རབས་ཀྱི་ང་།༽(ドラップキ・ンガ、時代と私)」の編者。記事も書いていた。この雑誌が逮捕の原因ではないかと見られている。
裁判が行われる時、妻のザムラと2人の子供が面会を許されバルカムに向かった。妻と子供は短時間の面会を許された。裁判は弁護士なしで短時間に判決が言い渡されたという。
ゾレップ・ダワは2006年、動物の毛皮を焼き払うキャンペーンが地域で広く行われた際、これに関わったとして約1ヶ月拘留されている。また、2008年3月16日には地区の平和蜂起に関わったとして3ヶ月拘留された。
参照:28日付 ダラムサラ・キルティ僧院リリース
28日付Tibet Times http://p.tl/Z63T
29日付 TCHRDリリース http://p.tl/a6Zt
その他ダラムサラ・キルティ僧院リリースによれば新たに僧侶が数人逮捕されている。
数日前ンガバ県ンガトゥアドゥ郷(རྔ་སྟོད་ཨ་འདུས་)出身キルティ僧院僧侶ロトゥ(བློ་གྲོས་36)が拘束されたが、理由、行方ともに不明。
ラサで最近ンガバ、アチョク・ツェンニー僧院(ཨ་མཆོག་མཚན་ཉིད་དགོན་པ་)の僧3人と俗人1人が拘束されたというが、氏名その他不明。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)