チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2011年8月29日

アムドの有名な女性歌手ラルン・ツォ 拘束

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ラルン・ツォが歌う「(恐れなき)心の歌」

南インド、デブン僧院僧侶プンツォが現地から得た情報をRFA等に伝えたところによれば、8月20日、歌手ラルン・ツォはツォエ(合作)で行われた文化人の夜会に招待され、ツォエに滞在していたが、夜会が行われる前に当局により拘束された。当局は拘束の理由などを明かさず、家族は非常に心配している。僧プンツォによれば彼女はこれまで政治的活動に一切関わったことはないという。


ラルン・ツォは甘粛省甘南チベット族自治州サンチュ(夏河)県ホルツァン郷出身、20歳の若い女性である。出身地の名を取りホルツァン・ラルン・ツォཧོར་གཙང་ལྷ་ལུང་མཚོ་とも呼ばれる。

同じ夜会に招待されていたラプラン・タシキル僧院僧侶ジグメ・ギャンツォも同じ日に逮捕されている。

彼女の歌を聞く限り、その歌詞の中に特に強い政治的メッセージが含まれているとは思われない。ただ、「チベットの3地区(ウツァン、アムド、カム)の人々が集うこの日は吉祥だ」とか「太陽と月がそろって現れる吉祥の日が来ますように」という歌詞は歌っている。チベット人に取って「太陽」とは「ダライ・ラマ」、「月」とは「パンチェン・ラマ」のことである。

中国当局は彼女が拘束される前日8月19日に「国家の文化安全に危害を及ぼす」と見なされる海外の100曲を「ブラックリスト」に登録し、9月15日までにネット等から削除せよという通達を発表している。違反した者は罰せられるとする。これに先立ち、今年1月7日と3月18日には内外200曲のブラックリストを発表している。

この件は今日付けで産経さんがレポートを上げているので以下にこれをコピペする。

平井堅やレディー・ガガは禁止 中国当局がブラックリスト100曲、国家安全に危害?
2011.8.29 18:00 http://p.tl/zJ2l
【上海=河崎真澄】中国当局が国内のインターネット音楽サイトに対し、台湾や香港などの歌手が歌う中国語の楽曲70曲と、平井堅やレディー・ガガなど海外の人気歌手の30曲を合わせた100の楽曲を9月15日までに削除し、ダウンロードできないようにするよう命じたことが分かった。
 歌詞が当局の検閲を経ておらず、「国家の文化安全に危害を及ぼす」と説明している。だが、やり玉に挙げられた平井堅の「いとしき日々よ」には、ネットユーザーが「別れの心情をつづった歌詞が誰に危害を及ぼすのか?」と反発するなど、不明確な“ブラックリスト”の基準に不満の声も上がっている。
 リストには2000年5月に、台湾独立を党綱領に掲げた民主進歩党の陳水扁総統(当時)の就任式典に請われ「中華民国国歌」を歌ったため、中国で「台湾独立派」とされた台湾先住民出身の女性歌手、張恵妹の歌も3曲含まれている。
 日本語曲は倉木麻衣の「もう一度」などを合わせて5曲、レディー・ガガに加え、米男性ポップアイドルのバックストリート・ボーイズなど欧米系25曲もリストされた。
 削除命令を出した中国文化省では、「インターネット文化管理暫定規定」を根拠に「ネット音楽市場の秩序を混乱させた」などと指摘。違法音楽サイトや海賊版の取り締まりの側面があることも示唆している。

外人歌手としてはレディー・ガガ、バックストリート・ボーイズ以外にBritney Spears 、Beyonce、Katy Perry、Simple Plan、Take That等が含まれている。

彼女の曲がブラックリストに含まれているかどうかは不明。彼女の拘束がこの通達と関係あるかどうかも今のところ不明だ。

何れにせよ、近年強化されつつある、チベットの文化人弾圧の一環であることは間違いない。

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ラルン・ツォの曲は他に例えば:http://p.tl/_SBG
シェルテン等も出演したお正月の歌会での歌(上のと同じ曲だが、歌詞が少し違う)http://p.tl/_SBG

参照:28日付けRFAチベット語版http://p.tl/vcpl
27日付けVOT中国語版http://p.tl/yY-K
27日付けブログOm Mani Padme Hum中国語http://p.tl/XcMQ

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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