チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2011年3月9日
3・10前日/ノルジン・ワンモ解放キャンペーン
まず以下の映像を見てほしい。SFTが制作した「March 10, 2011: A New Uprising」
http://www.youtube.com/user/SFTHQ
明日はいよいよ、「3・10蜂起記念日」。チベット人はこの日を「スン・チュ(3・10)」の日と呼ぶ。1959年のこの日、ラサのノルブリンカ前に何万人ものチベット人が中国軍に呼び出されたダライ・ラマ法王を守ろうと集まった。その後、これが中国の侵略に抗議する全面的民衆蜂起へと繋がって行く。蜂起は中国軍の大砲等による徹底的弾圧を受け最終的に10万人近いチベット人が殺された。
明朝9時からダラムサラのツクラカン前で恒例のセレモニーが行われる。この様子を日本からでもライブウェブで見る事ができる。時間のある人は日本時間の12時半ごろからhttp://dalailama.com/livewebにアクセスしてみてほしい。メインは法王の声明発表。
セレモニーの後、下ダラムサラまで中国政府に対する抗議行進が行われる。
今日、デリーでは早々とTYC(チベット青年会議)のメンバーたちが中国大使館前でデモを行い、大使館に突入しようとして数人(後記30人)が拘束されたそうだ。http://p.tl/y-z3
チベット本土も明日が一年中でもっとも警戒が厳しく緊張する日である。2008年にもこの日、デブン僧院の僧侶たちがラサに向かって行進を始め警官隊に阻止された。これが14日以降の全土大蜂起への引き金となった。
チベット全域で保安部隊が一斉動員され、チベット人は苦しい緊張状態の中に置かれることであろう。何が起こっても外に情報が漏れない事を一番の方策と思っている当局は、外人観光客をラサから追い出し、建物の屋上に狙撃隊を大勢配備し、準備万端整えていることであろう。
中国の治安対策費が国防費を上回ったという話が最近伝えられている治安予算は16年で40倍。前年度比13.8%増の約7兆8千億円。治安維持要員の数は何と2100万人に昇るという報告がある。この数字は通常の警察である「人民警察」、軍直轄の「人民武装警察隊」、そのほか秘密警察、ネット警察なども含む数字とされる。自国民に対する「武装」を強化する、文字通り桁違いの「警察国家」というわけだ。http://htn.to/fqdPDu
こんな現状の中で、昨日、偽パンチェン・ラマ11世ゲルツェン・ノルブがこんなことを言っている。「チベットの人々は現在、かつてないほどの自由を享受している」「商売も教育も僧侶になる事も自由だ。これは古いチベットでは不可能だった事。チベットの平和解放によりチベット人は真の主人となった」と。http://p.tl/yrkC これが「不自由な人代表」の発言である。
話は変わって、昨日は「世界女性デー100周年記念日」であった。世界中の差別や弾圧に遭っている女性を開放しようという日である。世界のチベットサポートグループは、この日から、「チベット女性による民族蜂起記念日」の3月12日までの間に、良心の囚人ノルジン・ワンモの釈放を要請する緊急アクションを世界に呼びかけている。
以下にアクセスし、この署名活動などに是非協力して頂きたい。
http://freetibet.holy.jp/2011/03/
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)