チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2015年7月10日
<速報>ジェクンド(玉樹)で新たな焼身 内地142人目
昨日(7月9日)、現地時間午後5時頃、青海省玉樹チベット族自治州玉樹県玉樹(ジェクンド/ケグド/ユシュ)の街の中心部にあるケサル広場で1人のチベット人僧侶が、中国政府のチベット政策に抗議するために焼身した。彼は病院に運び込まれたとの情報があるが、病院に運び込んだのが警察なのか、地元のチベット人なのかは明らかではない。また、焼身者の生死、氏名、年齢、所属僧院名なども現在玉樹一帯の情報網が遮断されており、未だ不明である。
玉樹(ジェクンド)は2012 年4月14日、大地震に襲われ、政府発表でも3000人の犠牲者が出た場所である。その後の復興の過程で、膨大な義援金が世界中から集まったにも関わらず、現地のチベット人たちは3年間もテント生活を強いられ、また政府が進める都市計画により多くのチベット人が土地を取り上げられた。これまでにこの街では土地強制収容に抗議する焼身が2件起こっている。
チベット内地での記録された焼身者の数はこれで142人となった。インドとネパールにおける焼身者5人と合わせると147人となる。5月27日に甘粛省甘南州ツォネ県で2児の母、サンゲ・ツォ(36)が焼身・死亡して以来の新たな焼身である。今年に入りこれでに6人のチベット人が中国政府に抗議するために焼身したことになる。
この3日前の7月6日はダライ・ラマ法王の80歳の誕生日であった。世界中で法王の誕生日を祝う盛大なイベントが開かれたが、内地でも、当局の厳しい規制、監視にも関わらず、カムやアムドを中心にチベット人たちがダライ・ラマ法王の写真を掲げ法王の長寿を祈るというイベントが各地で行われた。
焼身者たちの一様の訴えは「チベットの自由とダライ・ラマ法王のチベット帰還」である。今回の焼身は法王誕生日を契機にチベット内で再び盛り上がった法王帰還への思いが募った結果とみることができるかも知れない。
参照:7月9日付けRFA英語版
同チベット語版
VOAフェースブック
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)