チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2015年4月22日
ンガバの作家僧侶連行
チベットでは2008年以降、知識人・文化人、特に作家と歌手をターゲットとした弾圧が続いている。先月3月19日にもアムド、レゴンで作家のショクジャンが拘束され、今も行方不明のままである。今回新たに拘束されたのはショクジャンとも親交のあるンガバの僧侶作家ロミック(བློ་མིག 意味は「心の目」)である。
ロミックは4月17日、現地時間午後11時半頃、突然ンガバ・キルティ僧院の僧坊から警官により連行され、その後の消息は不明という。
ロミックはペンネームであり本名はジョ・ジャミヤン。連行の理由は明かされていないが、回りのチベット人たちは「彼が逮捕されたのは、彼の作家活動が原因であろう」と推測している。彼は2008年以降、著作活動を始めている。
彼が連行される前日には同じンガバでネキャプ(45)が焼身している。関係があるかも知れない。
ロミックは現在27歳。アムド、ンガバ(四川省ンガバ・チベット族チャン族自治州ンガバ県ཨ་མདོ་རྔ་པ་རྨེའུ་རུ་མའི་རུ་ཆེན་གསུམ་པ།)、メウルマ郷第3村の出身。父の名はドルゴ、母の名はジャムカル。彼は6歳の時、ンガバ・キルティ僧院付属の「仏教青年学校」に入学し勉強を続けていたが、2008年にこの700人在籍の学校が当局により強制閉鎖された後はキルティ僧院に入ると共に、タンゴ、レゴン、ラルンガルなど他の僧院も巡りながら、仏教哲学と著作の勉強を続けていたという。現在はンガバ・キルティ僧院の般若学学級で勉強している。
彼は2010年に「黄色い靄の由来(༼ན་བུན་སེར་པོའི་འཕྱུར་སྟངས།༽)」と題されたチベットの現状に関する本を西寧で出版している。それ以来、盛んに雑誌に投降し、様々な講演会に参加しながら、チベットの政治状況、焼身抗議、環境問題、言論・表現の自由に関する論議を行っていた。つい最近、出身地のメウルマで「言論の自由がない我々」と題された講演会を自分で企画実行している。
彼はショクジャンを始め他のチベット人作家とも親交が深く、地元を中心に若者に強い影響力のある僧侶と見なされている。
参照:4月21日付けTibet Timesチベット語版
4月20日付けRFA英語版
同チベット語版
4月22日付けVOAチベット語版
4月21日付けVOT中国語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)