チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2015年4月8日
アムドの青年作家再び拘束
3月19日、アムド、レゴン(青海省黄南チベット族自治州同仁県)の警察は作家・ブロガーであるショクジャンとその義理の兄弟を拘束した。数日後、義理の兄弟は開放されたが、ショクジャンは理由も明かされず拘束され続けているという。
ショクジャンはペンネームであり、ドゥクロが本名といわれる。レゴン県ゲンギャ郷出身の彼は現代のチベット人の生活を詩情豊かな文章で綴るのみならず、一般人の視点から法や警備のあり方についてのコメントをしばしば発表している。
彼が拘束されるのはこれが2度目である。2010年、彼がまだ北西民族大学の学生であった時、仲間の作家テウランと共に、2008年蜂起の真実を雑誌に発表したとして逮捕されている。その後しばらくしてショクジャンは開放されたが、テウランは4年の刑を受けた。
ショクジャンの拘束を受け、刑期を終え開放されたテウランを始め、何人かのチベット人作家がブログ等でショクジャンの無実と今回の拘束の不当性を訴えている。
拘束される3日前、街で大規模な武警の示威行進を見た後、彼は「3.16」と題された以下の文を発表していた。これが今回の拘束の原因となった可能性もある。
武装した警官が街角で普通の人たちをチェックしている。
これは人々を守るためなのか、或は人々の平安を乱すためなのか?
これが社会の安定をつくり出す方法なのか?
人々に銃を向けさせているのは誰なのか?
これが人々の普遍的人権を守るやり方なのか?
これが法律で支配されているといわれる国の行動なのか?
彼は中国支配下にある現代のチベット人一般のフラストレーションをリアルに伝える作家として多くのチベット人から尊敬される存在である。更なるチベット人知識人弾圧のケースとして、地域の人たちは強い憂慮を示しているという。
ショクジャンの親友である作家テウランは彼のことを「常に自由に敏感な男」と表している。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)