チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年12月16日
郷長選挙をめぐり学生1人 拷問死
今月10日、青海省ゴロ州ダルラ県タクト郷第3村(མགོ་ལོག་ཁུལ་དར་ལག་རྫོང་སྟག་ཐོག་ཡུལ་ཚོའི་རུ་ཆེན་གསུམ་པ།)の学生カルメ(22 ཀར་མེ།)が、激しい拷問を受け死亡した。カルメを含む13人は郷長選挙の際、中国当局が推薦する村長に投票しなかったとして拘束されていた。
ゴロ出身の在インド在住ダムチュ・ペルサンがTibet Timesに伝えた情報によれば、12月7日、ゴロ州ダルラ県の役人がタクト郷で郷長を選出するための集会を開いた。その際、住民はタシと呼ばれるチベット人に投票した。しかし、役人たちは選挙の結果を無視し、当局が推薦する中国人を必ず選出すべきだと命令した。その場で口論となり、集まった人々は再度投票を行うことを拒否、帰宅した。
その後、当局は大勢の警官を動員し、再び集会を行い当局の選ぶ中国人に投票させようとした。チベット人たちは「自分たちには自分たちの郷長を選ぶ権利がある。役人たちが推薦する中国人には決して投票しない」と主張し、警察の脅しをはねつけた。警察は選挙人として選ばれていたタシ、ロケル、ガンカ、ガンド、カルメ等13人を拘束し、ダルラ県の拘置所に送り尋問を始めた。12月10日、その内のカルメは激しい拷問の末、重体となり、県病院に運び込まれたが翌日11日病院内で死亡した。
この事件を知った郷内のチベット人たちは、県庁舎前に集まり、「学生カルメ殺害に関し正当な裁判を開くこと、自分たちに名実ともなる選挙権を与えること」を要求し、「自分たちは今も平和的に問題を解決する用意があるが、もしも、当局が誠実な対応を示さない場合、今後どのような結果になろうとも、すべてその責任は当局にある」ということを強調しているという。
参照:12月15日付けTibet Timesチベット語版
12月15日付けphayul
先のブログでも村長選挙をめぐり、当局が地元のチベット人たちが再選を希望する村長を殺害したという事件を報告したばかりだ。このところチベットで名ばかりの地方選挙が行われ、当局が自分たちに都合のいい指導者を選ばさせるということを強要しているようである。中国当局はかねてより表向きの選挙のために、拷問や殺人を平気で行っているのである。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)