チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年10月18日
セルタで元僧侶が1人デモ
10月16日、午後2時頃、四川省カンゼ州セルタの街の中心にある「金馬広場」で20歳代の元僧侶ドルジェ・リンチェン(བོད་མི་རྡོ་རྗེ་རིན་ཆེན། 愛称:ドリརྡོ་རིས།)が、空にルンタ(祈りの紙切れ)をまき上げながら「チベットに自由を!」と叫んだ。
周りにいた人々が彼の周りを囲った。保安部隊が駆けつけ、ドルジェを押さえ込み、大勢が激しい暴力を加えた。周りにいたチベット人たちはこれを見て、ドルジェを救おうとしたが、部隊は彼の頭の毛を掴みながら車に押し込み、どこかへ連れ去ったという。
最近亡命を果たした僧ゴロ・ジグメがこの情報を伝えたが、彼は自身の経験に照らしながら「彼が今、酷い拷問を受けているのではないかと心配だ」と語る。
目撃者によれば、「彼は何かが書かれたルンタを沢山まき上げながら、『チベットに自由を!ダライ・ラマ法王に長寿を!チベットには人権が必要だ!』と叫んでいた」という。
彼のデモを顔写真と共にウェイボ(微博)上で伝えた現地のあるチベット人は、「中国政府の因果と現実を無視した沢山の弾圧を目撃し、役人たちの一般チベット人に対する蔑視、いじめ、強要等を味わい、耐え切れず、彼は平和と自由のために、命の危険を顧みず、平和的な抗議を行ったのだ」とコメントしている。
ドルジェ・リンチェンはセルタ県ホルシュル郷(གསེར་རྟ་རྫོང་ཧོར་ཤུལ་ཡུལ་ཚོ།)の出身。母の名はリクツォ。彼はヌプ・スル僧院の僧侶であったが、数年前に還俗し、最近はラルンガル僧院内で店を開いていたという。
10月4日にはセルタの隣町であるカンゼで商人パッサン・ワンチュク(37)が同じく一人デモを行い、逮捕されている。セルタの「金馬広場」では、2012年11月26日にワンギェルが焼身抗議を行っている。
参照:10月17日付けRFA英語版
同チベット語版
10月17日付けVOT中国語版
10月17日付けTibet Timesチベット語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)