チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年9月26日
共産党祝賀会の最中「チベット独立」を叫んだ僧侶に10年の刑
去年7月1日、チベット自治区チャムド地区ツァワ・パシュ県で中国共産党創立記念日の祝賀会の最中、ドンサル僧院僧侶ロプサン・ゲンドゥンが「ダライ・ラマ法王に長寿を!ダライ・ラマ法王のチベット帰還を!チベットに独立を!」と叫び、その場で警官に逮捕されたということは先のブログで報告した。
彼が拘束された次の日、仲間の僧侶も連行され、2人とも重体となり病院に運び込まれるほどの拷問を受けたという話も伝えた。
9月17日付けRFAによれば、最近、この僧ロプサン・ゲンドゥンに対し10年の懲役刑が言い渡された。RFAに現地から情報を伝えた匿名希望のチベット人によれば、「9月12日、ドンサル僧院僧侶ロプサン・ゲンドゥンが親戚に電話を掛け、『チャムドの裁判所により10年の刑が下された』と伝えた。しかし、彼がどこの刑務所に収監されているのかは不明のままだ」という。
彼が拷問されたことが明るみにされた後、家族との面会は許可されなかった。一度だけ、今年1月28日にチャムドの裁判所が彼の両親を呼び出し、「彼が罪を認めるよう説得せよ」と命令した。「しかし、彼は罪をまったく認めず、無実を主張し続けた。それどころか、彼は中国当局に対し、チベット政策の過ちを自ら認め、謝罪すべきだと訴えた」と伝えられる。
共産党の祝賀会の最中に「本心を叫ぶ」と10年の刑を受けるということである。彼の場合は拷問を受けようとも、最後まで罪を認めず、抵抗し続けたことが長期刑に繋がった可能性もあるだろう。
このチャムド地区は拷問の激しさでも有名だが、もともとチベット自治区の中でも特に「チベットの村人一人一人の政治信条を監視するキャンペーン」が厳しく行われている場所として有名である。各家、各僧院に対しては共産党指導者たちの写真を掲げ、屋根には中国国旗を掲げることが強要される。
その他参照:9月18日付けRFAチベット語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)