チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年7月9日
むやみやたらと暴力を振るう中国当局 /ウーセルさん夫婦自宅軟禁
7月7日、四川省ンガバ州ゾゲ(ゾルゲ)県ペンユル地区(སི་ཁྲོན་མཛོད་དགེ་རྫོང་བན་ཡུལ་སྡེ་བ།)の住民10数人が警官隊にめった打ちにされ、その内1人は重傷を負い成都に緊急搬送された。
この日ペンユル地区の国道上にある料金所で、地区の仏塔を造るための資材を運んでいたトラックが止められた。地区の代表と年長者たちが政府の仏塔建設の許可証を持って料金所に集まり、トラックを通過させてほしいと懇願した。
すると警官隊がやって来て、彼らに激しい暴力を振るった。その結果、10数人の村人がゾゲの病院に担ぎ込まれ、内一人は重傷を負い成都まで緊急搬送されたという。
この事件をフェースブック等でいち早く伝えていたのは北京在住のチベット人作家ツェリン・ウーセルさんだったが、彼女は7月8日の夕方から夫である王力雄氏と共に自宅軟禁状態にされているという。この日、内モンゴルの旅から帰っていた直後、2人の監視員がマンションに現れたという。
この軟禁の理由を当局は明かさないが、ウーセルさんは現在北京を訪問中のアメリカのケリー国務長官と関係があるだろうという。彼女はアメリカ大使館から夕食会への参加を招待されているという。ケリー長官が人権問題を忘れていないことを示すためにウーセルさん等を招待したのであろうが、この情報を得た当局がそうはさせまいと取った処置であろう。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)