チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年6月21日
チベット人作家2人解放される
昨日6月20日、反中的文章を書いたとして、それぞれ4年の刑を受け服役していたチベット人作家2人が刑期を終え解放された。2人は四川省のメンヤン刑務所に収監されていた。
解放されたブダとザンツェ・ドゥンゴは2010年10月に「国家分裂煽動罪」により4年の刑を受けた(裁判の詳細はここへ)。2人とも『シャルドゥンリ(東方のホラ貝の山)』という雑誌に2008年のチベット全土蜂起に関する記事を発表していた。これは隠された真実を広く知らせるという趣旨で書かれたものだが、これが当局により「国家分裂を先導する文章」と見なされたのである。
『シャルドゥンリ』の編集者でもあったブダは医者である。2010年6月26日に逮捕された時も病院で勤務中であった。ザンツェ・ドゥンゴは著作以外に、地元ンガバ州キャンチュ郷に友人と共に地元で高い評価を得るデイケアセンターを運営していた。
同じく『シャルドゥンリ』の編集者であり、4年の刑を受けていた作家タシ・ラプテン(筆名テウラン)は今年3月29日に解放されている。
2008年以降、チベット人アイデンティティーや文化を称揚する歌手、作家、芸術家、ラマ等を当局は弾圧のターゲットとしている。
このところ、2008年以降に政治犯として逮捕され、収監されていたチベット人が続々解放されている。元政治犯との付き合いが多い私だが、彼らのほとんどは辛い刑務所暮らしや拷問が故に「観念しもう政治には関わらない」ことにしたという人ではない。解放された後も何らかの政治的活動を本土でも続けたという。「拷問されればされるほどに抵抗の意志は固くなっていった」という。
参照:6月20日付けTCHRD(チベット人権民主センター)リリース
6月20日付けTibet Timesチベット語版
6月20日付けRFAチベット語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)