チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年6月5日
ドゥンドゥップ・ワンチェン ついに解放される 「心は涙で一杯」と
解放され故郷のバエン県コツェ村に到着したドゥンドゥップ・ワンチェン。
数日前、当局はドゥンドゥプ・ワンチェンは6月6日に甘粛省のサンチュで解放されるであろうと家族に知らせた。家族や親戚はその準備をしていた。しかし、突然、今日6月5日の午後、現在の実家である妹の家に彼が現れたという。
その後、彼の従兄弟であり、ドキュメンタリー「ジクデル(邦題『恐怖を乗り越えて』)」制作にも関わったスイス在住のギェルジョン・ツェリンがドゥンドゥップ・ワンチェンとの電話会話に成功している。
彼によれば、解放されたドゥンドゥップは非常に感情的な言い方で「今、私の心の中にあるすべのものが、涙の海の中にあるように感じる。できるだけ早くもとの元気な身体にもどるようにしたい。収監中、私を支援しつづけて下さった人々に深く感謝の意を示したい。そして、家族と再会したい。」と語ったという。
現在4人の子供たちと共にサンフランシスコに居る妻のラモ・ツォは大きな喜びを示し、「6年に及ぶ不正と、日を数え続けるという苦しみは今日終わった。ダラムサラに残る彼の両親、子供たち、そして私にとって夢のように嬉しい日です。家族がまた一つになることを望んでいます。」と語ったそうである。
ギェルジョン・ツェリンは「依然として彼は当局の監視下にあるが、刑務所を出たといことで、医者を探す事はできるはずだ」と話す。
2008年北京オリンピックを前に、普通のチベット人たちのオリンピック等に対する正直な意見を集めたドキュメンタリー「ジクデル」を制作したとして6年の刑を受けていたドゥンドゥップ・ワンチェンは妻ラモ・ツォの真摯な解放キャンペーンの力もあり、世界的人権擁護団体から常に注目され、いくつかの有名な国際的人権賞も贈られている。
最後に理由不明のまま数ヶ月解放が遅らされたが、ついにドゥンドゥップ・ワンチェンが解放された。妻ラモ・ツォを中心とした彼の解放運動により刑期が短くなるということはなかったが、今はとにかく無事解放されたこと喜びたい。
今後、彼がどうやって家族のもとにたどり着けるか?が焦点だが、まずはしばらくは当局の監視も厳しいことであろう、焦らず当分は健康の回復に全力を尽くしてもらいたいとおもう。
参照:Filming Tibet プレスリリース
6月5日付けTibet Timesチベット語版
恐怖を乗り越えて・日本語字幕付き(ダイジェスト版)
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)