チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年6月2日
少数民族全面蜂起を想定した徹底弾圧演習
RFAなどによれば、<6・4記念日>を前に5月29日、中国は「共産党指導者のみを崇拝させる」ために少数民族暴動を想定した軍特殊部隊による分裂・テロ破壊行為を徹底的に粉砕するという演習を行い、これをテレビで放映した。
この演習は「大勢の人々が同時に至る所で暴動を始めた時、どのように対応するか」に主眼がおかれており、これをどのように十分コントロールできるかを見せ、「少数民族に恐怖心を抱かせるため」のものであるとRFAはコメントする。デモの群衆に発砲し、暴力的に逮捕するやり方をみせ、デモ参加者への発砲や暴力は当たり前に許可されている事も知らせている。
この全国版演習の3日前である5月26日には、チベットのカム、カンゼ(四川省カンゼチベット族自治州カンゼ)で、「焼身テロ」を含めた違法な行為に対する演習というものが行われた。
カンゼ地区の武装警官隊、特殊警官隊、軍隊が参加し、「焼身」「違法集会」「ハンガーストライキ」「殺人・窃盗」等の違法行為を対象に行ったという。ここでも演習の中でデモ参加者に対しす発砲が行われた。少なからぬ人数のチベット人が強制的にこの演習を見学させられたという。
参照:5月30日付けRFAチベット語版
5月27日付けTibet Timesチベット語版
5月30日付けphayul
最近、中国のテレビを見ていると、チベット人ではなく、大きな刀や出刃包丁を手にしたウイグル人が飛び出したところを、優秀な警官が見事に撃ち倒すという演習のシーンがよく流される。凶悪な国内の敵である少数民族テロ組織を一撃の下に粉砕できるのだというわけだ。どうして彼らがそのような行為を行うかなんて全く問題にされない。彼らは凶悪な犯罪人でしかない。
もう一つよく流されるのが、日本とアメリカの合同軍事演習の様子。これはいかにも明日にでも邪悪な日米が中国に戦争を仕掛けて来るがごとくに映し出される。その後、中国とロシアの合同軍事演習の様子が流され、「外の敵に対しても闘う準備は十分できている」というわけだ。何れにせよ、危機感を煽る事により共産党を中心にした漢族団結を促そうというわけだ。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)