チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年4月19日
ケンポ・カルツェとも親交深いチャムドの高僧が拘束される
中国当局はチベット自治区チャムド地区でチベット人僧俗から篤い信頼を得ているケンポ・ケドゥプ(40)を拘束した。ケンポとは尊称であり、学位を得た高僧または僧院長を意味する。
今月13日、ケンポ・ケドゥプがラサの仏教学院で開かれる会議に出席するため、チャムド県メンダ・ツォシュ郷にあるポヤク僧院を出発しようとしていたとき、突然警官により拘束された。ただ、彼が拘束されたのはラサであるという情報もある。現在、彼はチャムドの拘置所に収監されているという。
彼が拘束された後、ポヤク僧院にある彼の僧坊が捜査され、パソコン等が持ち去られた。警官は僧院の僧侶や地区のチベット人たちに対し「ケンポは刑務所内で祈祷を行うために出かけたのだ」と、明らかな嘘をついたという。
2012年ロサ(チベット暦新年)に、この地区で「チベットのために犠牲になった人々を弔うための法要」が行われた後、彼は当局の監視対象となっていたという。2013年には1ヶ月間拘束され、尋問を受けたことがある。
ケンポ・ケドゥプは人々からチャムド・ケドゥプと呼び慣らわされ、篤い信頼を受けていた。また、4ヶ月前に拘束され、今も同じチャムドの拘置所に収監されているナンチェンの高僧ケンポ・カルツェとも親交が深く、ジェクンド大地震の直後、共に救援活動を積極的に行った仲間であった。今回の拘束もケンポ・カルツェと何らかのつながりがあるかもしれないと推測する人もいる。
何れにせよ、彼の拘束はそれぞれの地域で影響力のある高僧を虐めるという当局の方針の一環と思われる。
この情報を伝えた在インドのクンサン・テンジンの下に現地から届けられたという手紙にはこの他、以下の報告が記されていた。
2012年に入り、チャムド地区チャムド県メンダ・ツォシュ郷で政治的ビラが撒かれるという事件があった。その後、その年の3月12日には郷に警官と役人大勢が現れ、集会を開き「ダライ・ラマ法王を非難し、共産党を讃える書面」にそれぞれがサインすることを強要した。
同じ日に、その年のロサに地区で「チベットのために犠牲となった人々を弔う法要を行った」としてメンダ僧院の教師ジャミヤン・イシェと僧ドゥプギュを拘束した。その際僧院が捜査され、僧ケルサン・ツェリンのお経の角に「チベットに自由を」と書かれていたとして彼も拘束された。
さらに、僧院には30人の僧侶しか所属してはいけないとして、40人の僧侶を強制的に還俗させた。これにより僧院の教学部は閉鎖に追い込まれた。その他、この地区が当局から様々な脅迫や嫌がらせを受け続けていると書かれていた。
参照:4月16日付けRFA英語版
4月17日付け同チベット語版
4月17日付けTibet Timesチベット語版
4月17日付けphayul
4月19日付けウーセル・ブログ
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)