チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年4月18日
ゴロ州ペマ県:年少僧侶用の学校が閉鎖され、「連帯協会」が解散させられ、農地が取り上げられる
閉鎖された学校。
青海省ゴロ州ペマ県ディンダ郷(མཚོ་སྔོན་ཞིང་ཆེན་མགོ་ལོག་ཁུལ་པདྨ་རྫོང་ངྷི་མདའ།)にある僧院付属の学校が当局により強制的に閉鎖された。「慈愛利他学校༼བྱམས་བརྩེའི་ཕན་བདེ་སློབ་གྲྭ༽」と名付けられたこの学校はディンダ僧院が運営する私設の学校であり、生徒はすべて年少の僧侶で70人ほどが学んでいた。今月10日頃、当局はこの学校の閉鎖を強要し、生徒は地元の普通学校に送られることになった。
これに対し、僧院や生徒の親たちは「生徒はすべて僧侶の戒を受けたものばかりであり、彼らが男女共学の普通学校に通うことになれば、戒律を守ることに支障をきたす恐れがある」と危惧しているという。
さらに、これまで学費はディンダ僧院が負担し、無料であったが、これから普通の学校に通うことになれば、親たちが学費を負担しなければならなくなり、貧しい家庭にとって負担が大きいともいう。
他、ディンダ郷には「連帯協会」というチベットの文化・言語・アイデンティティーを守るための協会があったが、当局はこれを強制的に解散させたという。
さらに、環境保全の名の下に、当局は地域の農地を森林に替えるという政策を発表し、強制的に農地を取り上げているという。農地を取り上げられたチベット人たちに補償金が支払われたかどうかは不明である。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)