チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年4月14日
カム、ザチュカ全域で僧院弾圧
RFAに現地から伝えられたところによれば、最近カム、ザチュカ(四川省カンゼチベット族自治州セルシュ県)一帯の僧院に大勢の役人、警察、軍が押し掛け、ネット・電話を切断し僧院を捜査、数人の僧侶が拘束されたという。
ザチュカ一帯には45の僧院があると言われるが、その内セルシュ僧院、ウォンポ僧院、チョオ僧院、アリ・ザ僧院、ワキル僧院、シルサ僧院その他小さな僧院にまで役人、警察、軍が出動し各僧坊を徹底的に捜査しているという。なぜこの時期にこのようなことが行われるのかは不明とされる。
これらの僧院の内一番のターゲットにされているのはウォンポ僧院という。ワキル僧院などから数名の僧侶が連行されたが、彼らの氏名は不明である。拘束の理由は携帯の中に中国が政治的と判断する情報や写真が入っていたからという。
ウォンポ僧院では2008年4月、僧侶たちが中国国旗を僧院内に掲げることに抵抗したとして、当局は僧院だけでなく、回りの民家にも押し入り破壊の限りを尽くした。その時、部隊がある家に踏み込み、掲げてあったダライ・ラマ法王の写真を地に叩き付け、これを踏みつけた。これを見たその家のトリ・ラモというチベット人女性は「なぜ師の写真を飾ってはいけないのか」と怒鳴り、さらに法王が一日も早くチベットに帰還されますようにとのスローガンを叫び、その後首を吊って自殺するという事件が起こっている。
2012年9月にはウォンポ郷にある学校の校庭に掲げられていた中国国旗が下ろされ、そのかわりにチベットの国旗が掲げられ、付近に「チベット独立」と書かれたビラが撒かれるという事件も起こっている。その後大勢の僧侶が拘束され、数人が刑を受けている。その後もこの地区では断続的にデモなどの抵抗運動が発生している。
しかし、最近は目立った動きはなく、なぜこの時期にこのような僧院弾圧が行われるのかについては現地の人々も分からないという。
最近チベットでは当局による携帯チェックが盛んに行われ、携帯内に敏感な情報や写真が入っていたとして拘束されるケースが相次いでいる。
参考:ザチュカ地区に関する過去ブログ
ザチュカで校庭に雪山獅子旗/ゴロで鉱山開発抗議
ザチュカ(セルシュ、石渠)で抗議活動/亡命政府外務大臣記者会見と新ビデオ
ザチュカで僧侶3人のデモ バタンでも僧侶3人がデモ ラサで携帯一斉チェック 女性蜂起記念日
ザチュカ、ウォンポ僧院からさらに7人の僧侶が連行される
ザチュカ、ウォンポ僧院僧侶3人に4年までの刑
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)