チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年4月9日
マニ車も政治的意図ありと撤去要求
8日付けRFAによれば、ゴロ州の病院にある薬師如来の真言が詰められたマニ車(マニコロ)に対し、当局が政治的意図があるとして撤去要求したという。さらに当局は同地区にある聖山を鉱山開発会社に売り渡すと決定した。
青海省ゴロ(ゴロク)州マトゥ県ゾラ郷にある、この地区で一番大きな心臓専門の病院(中央心臓健康病院)には24基のマニ車があるという。このマニ車は病院の医師たちの発案により地元の住民が資金を出し合って2010年に設置したものであり、中には病気治癒を祈願するための薬師如来の真言が詰まっている。この病院では治療のためにチベット伝統医学と現代医学が併用されている。
最近この病院を訪問した中国の役人がこのマニ車を見て、撤去を要求した。「彼らはこのマニ車の設置には政治的意図があるといい、早急に撤去しない場合には設置したものを処罰すると警告した」と現地の人は報告する。
「この要求に不満を示し、抗議したが、結局取り外すしかないであろう」「中国当局はついに宗教的付属物に対してまでも、それを政治的で違法なものとし、設置した者を犯罪者と呼び始めた」と現地の人たちはいう。
聖山を鉱山開発業者に売り払うと
同じくマトゥ県当局はゾラ郷にあるチベット人が崇める聖山を、外部の鉱山開発業者に売り渡すと広言しているという。
マトゥ県のカルコル村の背後、タシ・ダルギェ・サンドゥプ僧院の正面に聳えるリショルと呼ばれる山は地元の人々から聖山と見なされている。この山には「古代の武器と甲冑が宝ものとして埋められている」と地元の人々は信じているという。
県の役人たちは地元の反対を無視し、この山を鉱山業者に売り渡すことを決定した。「地元の人たちはこの聖山を守るために立ち上がるかも知れない」と現地の人は伝える。
4月2日には甘粛省サンチュ県ホルツァン郷の住民約100人が鉱山開発や高速道路建設のために自分たちの土地が取り上げられることに抗議するデモを行っている。
「幾つかの家族に対しては僅かな補償金が払われたが、大多数の家族にはまったく補償金が支払われていない」という。参加者たちは補償金要求、権利平等を訴える横断幕を掲げて行進した。これに対し当局は部隊を送ったが、その後デモに参加したチベット人たちがどうなったかの情報は入っていない。
「20年ほど前から、サンチュのホルツァン、ツァユ、カギャ地区等で当局は鉱山開発を行っている。このためにチベット人の土地が取り上げられているが、十分な補償金を貰った家族はいない」という。
2012年11月20日には、この地区の鉱山開発に抗議し、金鉱山の入り口でツェリン・ドゥンドゥップ(34)が焼身、死亡している。
参照:4月2日付けRFA英語版
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)