チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年4月5日
ソク県:拘束された僧侶の解放を求めた僧侶たちをめった打ち さらに3人拘束
ディル県の北隣りにあるソク県でもこのところチベット人の拘束が相次いでいる。多くは携帯・スマホをチェックされ、法王の写真や敏感な内容のメッセージを送り合ったことが見つかり拘束されている。チベット人たちにとって携帯・スマホは非常に危険な品となっている。
3月28日、チベット問題に関係するメッセージを送り合ったとしてチベット自治区ナクチュ地区ソク県ティド郷のリンチェン・ワンドゥとプルツェが拘束された。また同じ日に、鉄橋のたもとにある巨石に「チベット独立」と書かれていたことに関連し、ティルダ僧院僧侶アデも拘束された。3人の行方はその後不明となっている。
3月17日には同じくティルダ僧院の4人の僧侶、ツァンヤン・ギャンツォ、ツェワン、アツェ、ギェルツェンが拘束された。19日に、この4人を解放してほしいと6人の僧侶が警察署に出向いたが、警察側は話しを聞くどころか、この6人も拘束した。20日には、これを知った地区のチベット人が大勢政府庁舎前に集まり、彼らの解放を要求した。この中には年寄りや女性も多く、女性たちは泣いて懇願したという。
これを見て、当局は6人を解放したという。しかし、彼らは全員拷問を受けたらしく、歩くこともできない状態で、それぞれが抱えられて家までやっと辿り着くという有り様だったという。最初に拘束された4人の僧侶は依然拘束されたままである。
ティド郷では幹線上に何カ所も検問所が設けられ、すべてのチベット人を厳しくチェックしている。ティド郷からティルダ僧院に向かう11キロの間に3カ所も検問所を通らねばならないという。
15年の刑を受けていた僧侶解放 仲間の内2人は拷問死
2000年、他の4人の僧侶と俗人1人と共に逮捕され、15年の刑を受けラサのダプチ刑務所やチュシュル刑務所で刑期を過ごしていたソク県の僧ツェリン・ラゴンが14年目に解放され、先週故郷に帰ることができたという。彼が刑期を終えずに解放された理由は明らかにされていない。
僧ツェリン・ラゴンはシ・ケドゥプ、イシェ・テンジン、ガワン・ギュルメ、テンジン・チュワン、タクル・イシェと共に「2000年3月、木版で刷った政治的パンフレットを配布した。それはダライ・ラマ法王のチベット帰還とチベット独立を求めるものだった」と現地と連絡を取ったインドに亡命するガワン・タルパが報告する。
「全員に長期刑が言い渡されたが、その内テンジン・チュワンとイシェ・テンジンは健康を理由に早期に解放された。しかし、解放された時、2人は酷く衰弱しており、しばらくして2人とも死亡した」とタルパはいう。明らかに収監中の拷問が原因で衰弱し、出された後死亡したと思われている。
中国の警官をはじめとする当局の残虐な暴力性はチベットでも遺憾なく発揮されている。
参照:4月2日付けTibet Timesチベット語版
4月4日付けTibet Timesチベット語版
4月4日付けRFA英語版
4月4日付けphayul
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)