チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年4月4日
1年半後、焼身者が自ら腸を引き出すという衝撃映像が伝わる
2012年9月29日、カム、ザトゥの街中でユンドゥン(27)と呼ばれる若者が焼身抗議を行った。左の写真はその時伝わったものである。
彼の焼身を伝えたその時の当ブログには、<彼は「チベットに独立を!」と大声で叫んだ後、火を放ち、「ダライ・ラマ法王とギャワ・カルマパ尊師をチベットに招くべきだ!チベットには自由が必要だ!ダライ・ラマ法王に長寿を!ロプサン・センゲ博士はチベット人の指導者だ!鉱山開発を中止せよ!」等と叫びながら街の商店の前に来た。店の人たちは彼に水を掛けるなどして火を消そうとしたが、火の勢いは強く、腸が飛び出していたという。その腸を彼は自分の手で引きちぎろうとした、とも伝えられる>と書かれている。当局により連れ去られ、翌日彼は死亡したとICT等はいう。
彼の焼身後1年半ほど経った今年3月終わりに、ユンドゥンが焼身したときの映像というものが突然FB上に流れた。その映像はあまりにショッキングなものだった。
全身に白い粉を浴びた若者が胸を露にし、「チベットには自由が必要だ!ダライ・ラマ法王に長寿を!」と叫ぶ。その後、彼は血がにじむ腹部から腸を引き出し、それを引きちぎろうとする。しばらくして彼は苦痛に耐えきれず路上に倒れ込む。回りにはチベット人が集まり、これを見ているが、死を覚悟する彼に対し、誰も手を出そうとする者はいない。
<閲覧注意>のその映像はここにアクセスすれば見ることができる。
このとき彼が白い粉状のものを全身に浴びていたのは、おそらく彼が焼身中、誰かが消火器を使って火を消したからであろう。この映像に警察や部隊の姿が見えないところから、消火器を使ったのは部隊ではない可能性が高いと思われる。この映像の後、部隊が駆けつけ彼を運び去ったと思われる。
中国政府のチベット政策は、このような凄惨な行為をチベット人若者に行わせるほど、チベット人を追いつめている。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)