チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年3月30日
囚われのチベット人作家テウランが解放される
4年の刑を受け中国のメンヤン刑務所に収監されていたチベット人作家タシ・ラプテン(筆名テウラン)が3月29日、解放された。解放の日、刑務所の前で家族と友人たちが迎えたという。その後、彼は成都経由で故郷のンガバ州ゾゲ県タンコル郷に無事帰郷し、そこで大勢のチベット人に迎え入れられた。
蘭州西北民族学院の学生であった彼は2009年7月26日、突然ゾゲで拘束され、およそ2年後、2011年6月2日に4年の刑を受けた。彼は発禁となった雑誌「シャル・ドゥン・リ(ཤར་དུང་རི་東方のホラ貝の丘)」の編集者の1人であり、また短編集「血書༼ ཁྲག་ཡིག ༽」の著者でもある。この雑誌に関わった作家の多くが刑を受けている。
彼に関する過去ブログは:
獄中にあるチベット人作家テウランのエッセイ「彼らは我々を動物のように扱う」
温家宝のお言葉/”国慶節”によせて – 最近逮捕された3人のチベット人作家たち/さらに仲間が1名
彼はすでに多くの詩やエッセイを発表している。以下はその一部の日本語訳である。
地獄の囚人
(英訳のみ参照)地獄は鉄と鋼鉄で作られた要塞
ドアのない手枷、足枷の要塞自由を愛する人々がこの要塞の囚人
彼らは地獄の暗闇を見る受刑者
彼らは自由を味わいたいと望みながら暗闇に落ち込んだ人々彼らは外に出て口から白い息を吐き出した者たち
彼らが空に向け拳を振り上げた者たちしかし、地獄の法律により
彼らは法を犯した者とされ、獄中で手枷、足枷をはめられる
彼らの罪とは「自由への愛」母は言う、もっとも若い囚人は私の兄弟だと
世界でもっとも幼い囚人その子供の罪が、ただ遊び心に石を積み重ねただけであるならば
その子は無実に違いない自由、平等、民主、生きるため
囚人が1人、囚人が2人、囚人が3人、囚人が4人地獄はまことに地獄だ
自由、平等、民主、生きるため
この地獄の要塞からみんなが解放される時が来るのであろうか?チベット人同胞よ、戦士の刀を振り上げよう(冒頭のみ)
(チベット語原文、英訳参照)我々の勇気はお経の山の中で衰えつつある
我々の尊厳は外国に占領され弱まりつつある
同じ血と肉をもつチベット人同胞たちよ
あなたたちは悲しみの涙に溺れ、
苦悶に縛られつつある今日、私は歴史の背骨を通じてあなたの胸の中に入りあなたを凝視する
真実と伝えるために私は以下の言葉を綴る
……
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)