チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年3月19日
巨石の上に<チベット独立>と書いた容疑者として僧侶2人連行
15日のブログで、先の3月10日蜂起記念日に、ソク県の橋のたもとにある巨石に「チベット独立」の文字が描かれていたということは報告した。RFA等によれば、その容疑者として2人の僧侶が連行されたという。
当局は今月13日、チベット自治区ソク県ティド郷にあるティルダ僧院の僧侶ロプサン・ダルギェ(བློ་བཟང་དར་རྒྱས།19)とルントク・ギェルツェン(ལུང་རྟོགས་རྒྱལ་མཚན།18)を僧院から連行した。
彼らはその日、僧院で必要なものを買うためにソクの街に送られた。しかし、その帰りが遅くなり過ぎたとして拘束され、数日前に岩の上に「チベット独立」という文字を書いた容疑者とされたそうだ。
15日、ティルダ僧院の本堂は銃を持った軍隊により囲まれた。事件があった鉄橋のたもとには警察がテントを張り、ティド郷には警察や軍の車両が20台到着し、厳重な警戒が続いているという。
人気歌手シェルテンの歌をスマホで送り合ったとして2人拘束
2月以来拘束者が続くソク県だが、今までに13人が拘束され、多くは行方不明のままという。
3月14日にはソク県ティル郷第二村のツェリン・サムペル(18)とダクパが拘束された。彼らが拘束された理由はチベットの人気歌手シェルテンの歌をスマホで送り合っていたからと言われる。
シェルテンの歌は曲により敏感なものもあるが、彼は今も拘束されず歌い続けている。
ペマ県で焼身に関係したとして僧侶1人拘束
昨年11月11日、ゴロ州ペマ県にあるアキョン僧院僧侶ツェリン・ギェルが焼身抗議を行い死亡している。当局はこれまでにも、少なからぬ人数のチベット人を彼の焼身に関わったとして拘束、尋問している。
RFA等によれば最近、新たにドガク・テンジンというアキョン僧院僧侶が連行されたという。
焼身事件の後、ペマ県では以前にも増し、部隊の数が増え、警戒が厳しくなっている。部隊は村々を巡回し、嫌がらせを続けているという。
アキョン僧院は、「勝手に宗教的行事を行わないこと。若者のためのチベット語講座を開かないこと。国外発信のニュースを聞かないこと」と命令された。
同じくペマ県で3月9日、あるレストランに突然武装警官が大勢押し入り、分けもなくそこにいた人々に激しい暴力を振い、椅子やテーブルを壊して立ち去ったという。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)