チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年3月18日
ダライ・ラマ法王ジャータカ・ティーチング
3月16日はチベット暦の1月15日にあたる。チベットのラサでは正月から15日間、600年前にジェ・ツォンカパが始められた大モンラム会という祈祷会が行われる習わしとなっている。中国の侵略により中止されていた時期もあったが、法王は亡命後すぐにこの大モンラム会を復活された。
2週間のモンラムの間、僧侶や尼僧はツクラカン本堂に集まり、朝から夕まで様々なお経を唱え続ける。これで、僧侶たちは非常に元気になるらしい。
この日はまた月に一度のソジョン(懺悔)の日であり、法王は朝6時半頃からツクラカンにお出になり、ソジョンを仕切られた。その後、8時過ぎにツクラカン前の広場に下りられた。
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日本人はじめ外人とチベット人、インド人合わせ約5000人が参加。
まず最初にテンシュクという法王と皆の長寿を祈るという儀式が行われた。このテンシュクは一年に何度か、いろんな団体により行われるが、今回はカム、ツァワ地方が行った。仏の身口意を象徴する仏像、お経、チュテン(仏塔)をはじめ、穀物や花等多くの供養物が捧げられた。
このテンシュクについて法王は「テンシュクの力が効果するには徳を積まなければならない。ラマの側も徳を積み、弟子の側も徳を積む。徳があれば、ことはその人の思うように進む。内外の障害も除くことができる。徳を積むに最上の手段は菩提心に瞑想(慣れ親しむ)することだ」と言われ、その後発菩提心の儀式が行われた。
また、法王は三宝への帰依について、「仏教徒の帰依所は仏法僧だ。この中で本当の帰依所は仏でも僧でもなく、法である。仏はこの法を説いた人ということで帰依所だ。僧は法に従い、徐々に高い境地を現成していったという意味で、間違いのない友人だ。仏は法を説いた人、本来の帰依所は法、僧は修行を助ける友人と思い帰依すべきだ」と説かれた。
最後にこのところ恒例となっている、ジャータカ(仏の前世譚)ティーチングがあった。
もっとも、この時、ツォと言われるお供え物がみんなに配られはじめて、会場がざわついた。法王はちょっと待てと言われ、「今日のツォは袋の中に包まれてるようだ。これじゃ中身が気に入ったものかどうか分からなくて、選べないな。ハハハハハ、、」。
ジャータカの最後に「この前世譚により釈迦牟尼仏陀が修行時代に六波羅蜜を如何に行じられたかが分かる。自利の心を捨て、利他の心を最勝とみて、何世にも渡り努力し続けたことが知れる。仏の弟子である我々も仏の偉業を見本として励むべきだ」と話された。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)