チベットNOW@ルンタ

ダラムサラ通信 by 中原一博

2014年3月18日

<続報>ンガバの焼身者の遺書 16日の焼身はやはり2カ所で2人 内地129人 

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Lobsang Palden river crop焼身した僧ロプサン・パルデン

16日ンガバで焼身した僧侶に関しダラムサラ・キルティ僧院がリリースを発表した。それによれば、焼身者の名前は当初伝えられたケチョク・パルデン(ペルデン)ではなくロプサン・パルデンであるという。もっともこれは法名であり、ケチョク・パルデンが幼名という可能性もある。年齢は20歳前後。ンガバ県メウルマ郷リチェン第3村アシェル家の息子。母の名はナムド、義父の名はシェラップ。幼少よりキルティ僧院に入り、勉学は最終段階に進んでいた。弟もキルティ僧院の僧侶という。

街の商店、飲食店は彼への連帯を示すためにすべて店を閉めた。ンガバの街中はいつもにも増し、制服、私服の警官で溢れているという。

目撃者によれば、ロプサン・パルデンは焼身しながら何かを叫んだというが、その内容は伝わっていない。部隊に連れ去られたあと、今どこに収容されているのか分からず、生死も依然不明のままである。

ロプサン・パルデンは焼身する直前に遺書と思われる言葉を、中国のソーシャルサイトの一つである微信上に残していた。この中で彼は中国人と仲良くすべきことを説いている。

以下、その全文日本語試訳:

父母兄弟をはじめ親戚の皆さんに話しておきたいことは次のようなことだ。民族同士仲良くし誠実に接することができればそれに越したことはない。他に対し怒りの心を起こせば、負けたことになる。他に対し心を尽くせば、勝ったことになる、ということは言うまでもない。

また、ことを為す時は、どのようなことであれ愚かならず、よく考えて行うことが大事だ。学ぶ人なら学びに集中し、親であるなら子供に助言を与え、商人であるなら相互利益をモットーとし、農牧畜民であるなら父母を介護すべきだ。

同様に、世界のすべての人々、その中でも特に隣人である中国人とは必ず仲良くすべきだ。なぜかというと、お互い仲良くし愛情を持ち合っていれば、それぞれ考え方の違いはあっても、話し合うことができるからだ。そうではなかろうか?

知るべきは、何を行うにせよ、みんなの利益と自分1人の利益を考えるとき、みんなの利益が優先するということである。(個人の)幸福の源はみんなの利益であるからだ。

父母、兄弟、叔父叔母たち、さらにすべての親戚の皆さん、私に愛情を注ぎ教え導いてくれた教師たち、同級生たちよ、皆さんの願いが叶うことを祈っている。あなた方の思いのすべてが利他となりますように。

母よ、あなたの愛に守られ私たちは育った。あなたの血と汗により私たちは若者となった。あなたは喜びを下さった。多くの布施を頂いた。あなたの愛により私たちは苦しむということがなかった。すべてを守って下さったあなたに感謝する。恩ある母よ、でも、本当のことをいうことができない。文章が下手なせいもあろう。とにかく、皆さんに謝りたい。

「パルデンあるいはラクグ・ケペル(གླག་རྒོད་མཁས་དཔལ།)。あるいはカルセ・ランル(དཀར་ཟས་རང་ལུགས།)。他にはハハハ、スクトゥン(སུག་ཐུང་། 短足というニックネームか?)より」敬心とともに。

ツォコ県の焼身を新華社が確認

16日中にンガバだけでなく、ツェコでも焼身があったらしいということは伝えられていたが、確認されていなかった。しかし、この件に関しては珍しく亡命側ではなく、国営新華社がネット上にニュースとして流した。それによれば、青海省黄南チベット族自治州ツェコ県チャダル郷にあるチャダル僧院(བྱ་དར་དགོན་པ། 夏徳寺)の僧侶1人が、16日早朝、僧院の傍で焼身したという。

AP通信がツェコ県の公安に連絡を入れると、公安は焼身の事実を認めたという。

もっとも、焼身のすぐ後、当局は厳しい情報管制を敷き、現地と連絡をとることができず、焼身者の氏名、生死その他の詳細は未だ伝わっていない。

16日の2人を加え、2009年以降のチベット内地焼身者の数は129人となった。外地の5人とあわせると134人となる。

参照:3月17日付けVOA
3月16日付けTibet Times
3月17日付けTibet Times
3月17日付けウーセル・ブログ

20140316170707-526293

僧ロプサン・パルデンの遺書原文。

Map_TsampaRevolution_20140316_EN_XXL_sans焼身発生地地図(Tsampa Revolution 制作)。

10003486_10152375667600337_1776308476_n井早智代さんが、16日に焼身した2人のチベット人僧侶に捧げられた絵。

筆者プロフィール

中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro

1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)

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