チベットNOW@ルンタ
ダラムサラ通信 by 中原一博
2014年2月27日
骨と皮に成り果て死を待つ政治犯が解放される
甘粛省の刑務所が、文字どおり骨と皮に成り果てた一人のチベット人政治犯を解放した。明らかに拷問や虐待の結果そうなり、刑務所内で死なれるのを避けるために解放されたと思われる。
RFA等によれば、2010年5月に逮捕されていたゴシュル・ロプサン(43)は去年のチベット暦(ホルダ)10月27日に家族の下に返されたという。やせ衰えた彼を写す日時不明の写真が伝わっている。食物を自力で取ることができず、生きる望みは少ないと見られている。
甘粛省甘南チベット族自治州マチュ県ペルペン郷出身のゴシェル・ロプサンは、2008年の春、マチュで起った抗議デモの扇動者の一人とされ、指名手配された。その後逃亡生活を余儀なくされ、2年ほど後にマチュで逮捕された。最初の5ヶ月間をマチュの拘置所で過ごした後、蘭州の刑務所に送られたという。
彼の兄弟、在オーストラリアのデムジョンによれば、「(拘束中)彼は手かせ足かせをはめられ、激しい暴行・拷問を受けた」「蘭州の刑務所に送られた後も虐待が続いた」という。
「彼の容態が悪化したとき、当局は何らかの薬を与えたようだった。しかし、それは効き目がなかった」「結果、彼は骨と皮状態になり、もう生きられないと判断され、2013年10月27日に解放されたのだ」と続ける。
ゴシェル・ロプサンは1992年にインドに亡命し、ダラムサラ近郊のスジャスクールで学んだことがあり、妻と2人の子供がいる。
ゴシェル・ロプサンが正式に刑期を与えられていたのかどうかについての情報はない。また、現在の容態、このニュースが伝わるのになぜこれほどかかったのかも不明である。
筆者プロフィール
中原 一博
NAKAHARA Kazuhiro
1952年、広島県呉市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。建築家。大学在学中、インド北部ラダック地方のチベット様式建築を研究したことがきっかけになり、インド・ダラムサラのチベット亡命政府より建築設計を依頼される。1985年よりダラムサラ在住。これまでに手掛けた建築は、亡命政府国際関係省、TCV難民学校ホール(1,500人収容)、チベット伝統工芸センターノルブリンカといった代表作のほか、小中学校、寄宿舎、寺、ストゥーパなど多数。(写真:野田雅也撮影)